47 / 58
復讐実行の章 ※センシティブな内容となります
46:心強い味方
しおりを挟むマリーズと学生時代の友人達による、定期的なお茶会。
結婚生活も2年目に突入し、何回か現状報告を兼ねたお茶会も開かれ、そろそろ終わりが見えて来た。
後1回か2回で、3年になりそうである。
「今日もどこに行くのかとしつこく聞かれました」
マリーズが友人達に報告する。
嘘では無い。
ジスランは自分が一緒に行けない社交について、しつこいくらいにマリーズに質問するのだ。
それは愛故の、執着からであった。
しかしこの場では違う意味に取られてしまう。
「公爵家の実情を話されたら困りますものね」
「子供の事も、まだ世間には内緒にしてますのよ」
「愛妾の存在も、上手く隠してますわ」
マリーズの友人達は、夫に探りを入れ、ジスランの社交界での様子を調べてくれていた。
「完璧な愛妻家を装ってますわね」
「思わず私も信じてしまいそうになりましたわ」
彼女達は憤っているが、ジスランに裏は無いだろう。
しかし、ここでは「マリーズとは白い結婚である」事が前提で話されるので、ジスランの行動全てが嘘くさく、胡散くさく見えてしまうのだ。
「皆様、いつもありがとうございます」
マリーズが伏せ目がちにお礼を言う。
その気持ちに嘘は無い。
白い結婚での離縁をした後に、マリーズと親しい友人達が夫にジスランの事を聞いていた、という事実が欲しいかった。
ジスランと別れた後にも、マリーズの生活は続く。
ジスランは腐っても公爵家である。
絶対にマリーズの方が不利になるだろう。
それを少しでも緩和する為だった。
「離縁後はどうなさるの?」
ミレイユが質問する。
それはそうだろう。
今、ミレイユが居るのはクストー伯爵家、マリーズの実家である。
戻って来るなという意味での心配ではなく、戻って来たいのならば協力すると言いたいのだろう。
夫であるマリーズの兄にも黙っていてくれているミレイユ。
今では、なぜ前回仲良くしていなかったのかと疑問に思うほど信頼し、親友と呼んでも差支えの無い間柄だった。
「1年程、静かに暮らしたいと思っております」
マリーズが曖昧な笑顔で答える。
社交界から離れて、隠れて暮らす……という意味だった。
「協力してくださる方がいらっしゃるのね」
ミレイユが安心した顔をマリーズへと向ける。
それに対してマリーズは、やはり曖昧な笑顔を返すだけだった。
「今日も愚痴大会?」
夜。魔法使いマリーズと交代したマリーズは、魔女と弟子が住まう敷地内の家に来ていた。
コレットの妊娠を外部に隠す為に、医者と弟子を敷地内にある離れに住まわせたのはジスランだ。
勿論、そうなるように誘導したのはマリーズである。
ジスランは自分で考え、自分が決定し、自分の意思で行動したと思っているようだが……。
「最近は皆が社交界でのジスランの様子を教えてくれるわ」
マリーズが寝る前のハーブティーを飲みながら、魔女と会話をする。
今日も肉体労働はマリーズに任せて、マリーズは離れのベッドで熟睡予定である。
「ねぇ、離縁後はうちの弟子はどうするの?」
ハーブティーを飲み終わり、ベッドに入ったマリーズに魔女が問う。
「……その時に考えるわ」
マリーズは眠気に負けて、目を閉じた。
「後悔しない選択をね」
口端を持ち上げた魔女の言葉は、マリーズには届かなかった。
52
お気に入りに追加
1,680
あなたにおすすめの小説
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる