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復讐実行の章 ※センシティブな内容となります
45:公爵家一族として
しおりを挟む「ま、んま」
コレットが産んだ子供は、しっかりとした乳母が付けられ後継者として育てられていた。
1歳の誕生日が過ぎ、何となくの言葉を話すようになっていた。
コレットは子供の授乳や下の世話もある為に使用人の仕事には就けなくなり、完全な妾へと立場が変わった。
準貴族のコレットが産んだ子でも、やはり息子の血を引いている子供は可愛いのか、公爵夫妻は孫を可愛がっていた。
段々と態度が軟化したという方が正しいか。
結婚して2年経つのに、正妻のマリーズが懐妊しないせいもあった。
ジスランが日々、それこそ毎晩励んでいるのはメイド達からの報告で判っていた。
それなのに子供の出来ない嫁。
公爵夫人としての仕事は、いつもマリーズが昼近くまで起きて来ないので教えられない。
その原因がジスランなので、強く言えない公爵夫人は尚更孫への執着が増した。
マリーズが庭へ出ると、公爵夫人と孫が遊んでおり、乳母とコレットも一緒に居た。
1番先にマリーズに気付いたのは乳母で、マリーズに向かって頭を下げる。
次にコレットが気付いたが、マリーズを見下すように見てきただけだった。
当たり前だが、立場はマリーズの方が上である。
コレットの態度でマリーズに気付いた公爵夫人が、咳払いをしてコレットの態度を咎める。
孫は認めても、コレットの事は認めていない。
公爵夫人は、孫が話せるようになったら、マリーズを母と呼ばせようと思っていた。
「あら、マリーズさん。お体は大丈夫?」
嫌味を滲ませて、公爵夫人がマリーズへと声を掛けてきた。
「はい。昨夜はジスランが加減してくれたので、庭の散歩が出来ます」
頬に手を当て、照れたような困ったような微妙な表情でマリーズが答える。
コレットから魔法使いに戻ってから、ジスランは益々マリーズを傍に置きたがるようになった。
コレットが出産したから、マリーズの夜の態度が変わったのだと、自分に都合の良いように誤解したようだ。
遠慮しているのだと思ったのだろう。
マリーズの様子を見てコレットの顔が嫉妬で歪むのを、マリーズは心の中で嗤った。
嫉妬する必要など微塵も無いのに、と。
大分大きくなった子供は、既にかなり歩けるようになっていた。
マリーズに気付き、行き先をマリーズの方へと変更する。
「親子水入らずのお時間ですわね。私はこれで失礼いたします」
子供の行動に気付いたマリーズは、挨拶をして踵を返した。
マリーズは、子供の名前を聞いていない。
3年で公爵家を去る事を決めているマリーズは、子供との関わりを避けていたから。
それは子供の為でもあった。
下手に記憶に残り、将来どこかで会った時に戸惑うのは、子供が可哀想だと思ったからだ。
ジスランも特に話題にしなかった。
子供に殆ど愛情を持っていないからだ。
「前回は、あまり幸福では無かったようなのよね」
魔女が教えてくれた前回の未来では、子供も含め公爵家は幸せでは無かったようだ。
特に子供は乳児期の睡眠不足で、成長に障害が出たようだった。
「構われ過ぎよりは、無視される方が赤子には良いのかしら」
マリーズは振り返り、公爵家の団欒を見つめて呟く。
その声音は、存外に優しかった。
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