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復讐実行の章 ※センシティブな内容となります
38:現状確認
しおりを挟む「昨夜はすまなかった、マリー。体は大丈夫か?」
突然夕食の席でそう言われ、マリーズは一瞬意味が解らなかった。
しかし朝見たコレットであるマリーズの惨状を思い出す。
おそらく魔法使いと違いコレットは、ジスランの名前を呼び、マリーズとして愛される事に涙し、ジスランの嗜虐心を刺激する良い塩梅で抵抗したのだろう。
「もう、あまり無理はさせないでくださいね」
壊れてしまうから。
俯いてぼそりと告げれば、ジスランは勝手に都合の良いように誤解してくれる。
「すまない。コレットに負けたくないなどと言うものだから……」
ジスランは歯切れ悪く言い訳する。
成程、とマリーズは納得する。
きっとコレットはジスランの自分への不遜な態度と、マリーズへの愛溢れる態度の違いを知って「マリーズに負けたくない」と言ったのだろう。
夜のマリーズの言葉は、全てジスランの都合の良いように変化する。
「それでもです。昼まで動けないと、公爵夫人としての仕事に支障が出てしまいます」
これは本当である。
コレットと入れ替わって朝から元気であっても、マリーズの状態をメイド達は知っているので、昼過ぎまで怠そうに自室で過ごさなければいけないのだ。
少し落ち込んだジスランに、畳み掛けるようにマリーズは告げる。
「今日は、夜の営みは無しですからね」
マリーズの言葉に、ジスランは死刑宣告か良くて最後通牒を受け取ったかのような絶望的な顔になる。
「前からお願いしていたでしょう?明日は学生時代の友人達と集まると」
理由が有っての拒否だと知り、ジスランは途端に安心を滲ませる。
「一緒に寝ると我慢出来ないでしょうから、今日はベッドも別ですからね」
マリーズの有無を言わさぬ物言いに、ジスランは渋々頷いた。
翌日。
朝早くからメイド達に磨かれ、マリーズは待ち合わせのレストランへと向かった。
万が一を考えコレットと入れ替わっていたが、さすがに猿よりは頭が回ったのかジスランはマリーズの寝室へ来なかった。
朝迎えに行った時になぜか勝ち誇った顔をしていたコレットに、「貴女じゃなかった時は一度も抱かない日は無かったのに、やはり中身が違うと駄目なのかしら?」と態と言うのも忘れなかった。
「まぁ!マリー様!お久しぶりですわね。結婚式以来かしら」
待ち合わせの部屋へ入ったマリーズを迎えたのは、旧姓ミレイユ・マルタン、現ミレイユ・クストー伯爵夫人である。
マリーズに会いにクストー伯爵家を訪ねていたはずが、いつの間にかマリーズの兄との愛を育んでいたようで、マリーズの少し後に結婚したのだ。
そして他にも四人、学生時代の友人が居る。
皆、今では結婚しており、社交界でも顔を見掛ける事もある。
しかし話す事は殆ど無い。
辛うじてミレイユとはお互いの近況報告をするのだが、それ以外は挨拶を交わすのがせいぜいだった。
「相変わらず旦那様は嫉妬深くていらっしゃるの?」
席に着いたマリーズに、子爵夫人が話し掛ける。
「この前、主人と一緒にお声掛けしましたら、マリー様を連れてすぐにどこかへ行かれてしまいましたのよ」
伯爵夫人が溜め息を吐く。
「ご自分の友人には、見せびらかすように紹介されますのにね」
別の伯爵夫人が呆れたように言うのは、その現場を見たからだろう。
「学生時代の友人の夫であっても異性は近付けたくないって、本当にマリー様は大変ですわね」
候爵夫人が同情するような笑顔をマリーズに向けた。
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