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復讐実行の章 ※センシティブな内容となります

35:4ヶ月

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 コレットの妊娠が判明してから、4ヶ月が過ぎた。
 マリーズとの子供が欲しいジスランは今まで以上に執拗な抱き方になったが、懐妊の報告は無いまま時だけが過ぎた。
 魔法使いの子宮は、自分で妊娠する機能は備えていないので、当たり前だった。

「コレットのお腹が大きくなってきたでしょう?お医者様の所で1度しっかりてもらいましょう」
 ある日、マリーズはコレットに提案した。
 妊婦になったコレットは、マリーズ付きになったが身支度を整えるなどの仕事は技量が無くて出来ない。
 部屋の掃除も、水仕事は体に良くないという理由で、乾拭きで済む家具や窓の仕上げ拭きの仕事しか出来なかった。
 それすらも妊娠を理由になまけようとするコレットは、他の使用人からの評判がすこぶる悪かった。

「医者の所?行く行く!ジスランの子供の為だもん」
 仕事を休む良い理由が出来たコレットは、二つ返事で了承した。

 それが地獄への招待状だとは気付かずに……。



「え?医者って敷地内に居るの?」
 街に出掛けられると内心喜んでいたコレットは、行き先が歩いて行ける距離の敷地内である事に、目に見えて落胆した。
 外観は使用人が家族で住む家に見える。
 玄関をノックすると、カチリと鍵の開く音がして、ゆっくりと扉が開かれた。

「はい、いらっしゃい」
 笑顔で迎えてたのは、コレットの妊娠を診断した医者だった。
 年若い女性の医者で、本当に大丈夫なのかと密かにコレットは思っている。
 マリーズとコレットが室内へ入ると、後ろでカチリと鍵の掛かる音がした。
 コレットは振り返ったが、後ろには誰も居なかった。
 鍵の掛かる音は空耳だった?
 そう結論付けた。

「アレの準備は?」
 マリーズが問い掛けると、医者は奥の扉を指し示した。
 その扉へ向かって、マリーズと医者は歩いて行く。
 この家の中へ入ってから、コレットはまるで居ないもののように扱われていた。

 扉が開かれると、中にはベッドが一つだけだった。
 そのベッドが、普通のベッドの3~4倍は大きい。
 大の大人が両手を広げて二人寝転がれる程だ。
 その特大のベッドの真ん中に、男が一人寝ていた。

 いや、意識は有るようで、目だけをギョロギョロと動かしている。
 目の下にはくまがあり、体も妙に細く見える。
 まるで日々寝て過ごしている病人のようだ。


「また痩せた?もう、お食事は毎回全部食べないと駄目ですよ」
 マリーズが言うと、医者が苦笑いする。
「しょうがないわよ。ここのところ夜が激し過ぎて、朝食抜きになる事もあるし、夜は普通に食べると吐くわよ」
 医者の言葉に、マリーズが大袈裟に驚く。
「え?それは私も体調不良になるって事ですか?」
 その芝居がかった様子に、コレットの眉間に皺が寄る。

「女性なら大丈夫なのよ」
 医者の視線がコレットへ向いた。
「それなら安心ですわね」
 この家に入ってから初めて、マリーズはコレットを見た。
「では、これから半年間よろしくお願いしますね」
 マリーズは、女性でも見蕩れるような笑顔をコレットへと向けた。


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