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色々やったので、初心にかえろうと思います
540:個性の強い隠し味
しおりを挟むおかしい。夏野菜カレーだったはずなのに、夏魔物野菜も入ってるよカレーになっていく。
里芋は良い。奴等は号令で食べ頃が集まり、自ら皮を脱ぎ捨てるだけだから。
人参も別に良い。収穫時に二足歩行で逃げ回るだけで、その後はちょっと美味しい人参なだけだから。
だがしかし、いつまでもラブソングを歌っている玉葱や、カウントダウンする茄子はどうなのか。
<丸ごと加熱しなければ、茄子は直ぐに大人しくなるよ>
俺が茄子を眺めていたからか、リルが説明をしてくれる。
「おい、そのオッサンはどうするつもりだ?」
木箱に山程の魔物林檎を運んでいるリコンスに声を掛ける。
全部が満面の笑みの魔物林檎。キモイ。
「はぁ?リコが知るわけないでしょ」
キレられた。
「アレと同列か……」
オッサン……いや、大宮さんが苦虫を噛み潰したような顔をする。
えぇと、すまん。
「魔物果物は美味いけど、こっちのオッサンは渋いだけだな」
「お、上手い!座布団1枚!」
いやいや、お前等。オッサンの顔を見ろよ。笑ってられなくなるぞ。
あ、拳骨炸裂。
良い音したなぁ。
相変わらず迂闊な兄弟である。
魔物林檎はすりおろされ、隠し味に使用された。
食べやすいように切られ、ネルやユキにも提供された。
ヨミ?丸ごと齧り付いてたよ。
プーリやオパールが嘴で突くのもなかなかシュールだ。
まぁ、他の子達もほぼほぼ丸齧りだけどな。
<これ~ドーロにもあげてくる~>
何口か食べてから、テラが林檎を手にフワリと飛ぶ。
<じゃあ、プーはアモンとアニンにあげる!>
プーリが飛び立とうとして、林檎を咥えて歩き出す。
プーリが飛び立ったら、この辺りの物は全て吹き飛び大惨事だった。
そういう判断が出来るようになったのか。成長したな。
魔物果物は、うちのクランの敷地内に不本意ながら果樹園があるから、いつでも食べられるのだが……。やはりこういうイベント時に食べると更に美味しく感じるよな。
しょうがない。
ペット達も連れて来るか。
お出掛け用のカラフル兎の菓子箱は、うちの子達用しかなかったよな。
何往復かすれば良いか。
いつもならカラフル兎でも散歩がてら移動出来る距離ではあるのだが、これだけ人数が居る所をあの小さい兎がウロチョロしたら、悲しい未来が訪れるだろうからな。
「ちょっとカラフル兎達を取りに行って来る」
俺が立ち上がると、ガルムも一緒になって立ち上がる。
「僕も行きますよ」
レイが立ち上がるのを、手で制する。
「いや、カラフル兎用に林檎の加工を頼む」
テーブルに置かれた満面の笑みの魔物林檎を指差すと、レイは浮かせた腰を落ち着けた。
「あ、じゃ僕行きますよ!兎の箱いるでしょ?」
離れた所に居たはずの斗苫斗的が、いつの間にか傍に居た。
「咲樹の用事は済んだのか?」
まだ咲樹は離れた所で一人で居る。
「はい。僕の出来る所は終わりました」
ニッコリ笑った斗苫斗的は、何をしていたかは話すつもりは無いらしい。
こいつは咲樹信者だからな。
咲樹が言うなと言えば、絶対に口を割らないだろう。
ま、咲樹のしている事など興味無いけどな。
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