上 下
31 / 38
色々やったので、初心にかえろうと思います

536:家庭菜園

しおりを挟む



 長期休暇も終わり、休んだ分は働けよ!とでも言われているような、通常以上の仕事量をこなした俺は疲れていた。
あるじ、息災か?>
 だからいつものガルムの問い掛けにも、無言で首を横に振ってしまった。
 ガルムに抱き着いたままなので、胸の毛エプロンに頬擦りしているかのようだけどな。

<主~どうしたの~?>
<きゅ?>
 ガルムに抱き着いたまま動かない俺の元へ、テラとヨミが近付いて来た。
 優しい良い子達である。
「大丈夫だ……!?」
 ガルムから離れ振り返ったら、テラとヨミだけでなく、従魔大集合だった。
 ズラリと並んでいる。
 あ、勿論トレント隊は居ないけどな。


 皆をモフモフナデナデして浮上した俺は、最後に撫でていたタダムネを手に立ち上がる。
 トーチのように、右手に持ったタダムネを高く掲げた。
「よし!皆で畑に行こう!」
<おー!>
<きゅ!>
<わーい!>
<はたけー!>
 テラ、ヨミ、シズカ、プーリの子供組が元気に返事をする。

 ガルム、ユキ、リルは静かに立ち上がった。
 ムンドは無言で俺の手首にクルリと嵌る。なんでやねん。
 なぜかネルだけは、しょんもりしていた。


「どうした?ネル」
 声を掛けると、益々顔が下を向く。
<ネルね、お水撒いたり出来ないし、魔物野菜の収穫ヘタクソなの>
 あぁ、魔物野菜は爆発したり逃げたりするのもあるからな。殺気をぶつけると大人しくなる、とか、とにかく早く刈り取る、とか変なの多いよな。
 補助系魔法使いのネルには、確かに厳しいだろう。

 だがしかし。大丈夫だ、ネル。
 俺も魔物野菜をまともに収穫出来る気がしない側だ。
 そしてその前に……
「行くのは普通の畑の方だからな」
 俺の担当は、家庭菜園である。
 魔物野菜畑は、ジルドやオーべが管理人のはずだ。

<話が纏まったようであるな。放して貰っても良いでござろうか?>
 右手に持っていたタダムネから声が聞こえた。
 すまん。あまりにも手にフィットしていて、離すのを忘れていた。



 久しぶりの畑だ!
 イベント中は畑の、というか参加したクランのクランハウスなどは時間が経過していないらしい。
 確かに黄金週間イベント中放置されていたら、育ち過ぎた野菜が大変な事になっていただろう。
 世話係のトレント隊もイベント会場に居たからな。

 個人参加していた【愛でるもの】のカフェはどうなのだろう?
 あの店は、カフェだけどクランハウスのはずだ。
 戦闘民族のココアや経験積みたい紫蘭は参加するって話してたし、実際に参加しただろう。
 会ってないけど。

 御祭り大好きリコンスは参加してたな。ただし、リイドとシアラは不参加だった。
 生産職三人は参加。
 他のメンバーはどうだったのだろう?
 皆カフェ店員のイメージが強いが、結構な戦闘職だったよな。


「あ!やっと来たらー!」
 うちの野菜畑に、作業着姿で良い汗を掻いている犬獣人が居た。
「はれひめ?何してる」
 困惑を隠さないで声を掛けると、はれひめは心外な!と頬を膨らませる。

「イベント中のカフェへの納品の為に、畑の収穫をしてあげたんでしょ!」
「え?クランハウスは時間停止してただろ?」
「何もしなければ停止だけど、世話すれば普通に実るんだよ!」
 そうだったのか。

 その前に、うちの野菜ってカフェに納品してたっけ?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されて異世界行ったら、全てが終わった後でした

仲村 嘉高
ファンタジー
ある日、足下に見た事もない文字で書かれた魔法陣が浮かび上がり、異世界へ召喚された。 しかし発動から召喚までタイムラグがあったようで、召喚先では全てが終わった後だった。 倒すべき魔王は既におらず、そもそも召喚を行った国自体が滅んでいた。 「とりあえずの衣食住は保証をお願いします」 今の国王が良い人で、何の責任も無いのに自立支援は約束してくれた。 ん〜。向こうの世界に大して未練は無いし、こっちでスローライフで良いかな。 R15は、戦闘等の為の保険です。 ※なろうでも公開中

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

処理中です...