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色々やったので、初心にかえろうと思います
536:家庭菜園
しおりを挟む長期休暇も終わり、休んだ分は働けよ!とでも言われているような、通常以上の仕事量をこなした俺は疲れていた。
<主、息災か?>
だからいつものガルムの問い掛けにも、無言で首を横に振ってしまった。
ガルムに抱き着いたままなので、胸の毛に頬擦りしているかのようだけどな。
<主~どうしたの~?>
<きゅ?>
ガルムに抱き着いたまま動かない俺の元へ、テラとヨミが近付いて来た。
優しい良い子達である。
「大丈夫だ……!?」
ガルムから離れ振り返ったら、テラとヨミだけでなく、従魔大集合だった。
ズラリと並んでいる。
あ、勿論トレント隊は居ないけどな。
皆をモフモフナデナデして浮上した俺は、最後に撫でていたタダムネを手に立ち上がる。
トーチのように、右手に持ったタダムネを高く掲げた。
「よし!皆で畑に行こう!」
<おー!>
<きゅ!>
<わーい!>
<はたけー!>
テラ、ヨミ、シズカ、プーリの子供組が元気に返事をする。
ガルム、ユキ、リルは静かに立ち上がった。
ムンドは無言で俺の手首にクルリと嵌る。なんでやねん。
なぜかネルだけは、しょんもりしていた。
「どうした?ネル」
声を掛けると、益々顔が下を向く。
<ネルね、お水撒いたり出来ないし、魔物野菜の収穫ヘタクソなの>
あぁ、魔物野菜は爆発したり逃げたりするのもあるからな。殺気をぶつけると大人しくなる、とか、とにかく早く刈り取る、とか変なの多いよな。
補助系魔法使いのネルには、確かに厳しいだろう。
だがしかし。大丈夫だ、ネル。
俺も魔物野菜をまともに収穫出来る気がしない側だ。
そしてその前に……
「行くのは普通の畑の方だからな」
俺の担当は、家庭菜園である。
魔物野菜畑は、ジルドやオーべが管理人のはずだ。
<話が纏まったようであるな。放して貰っても良いでござろうか?>
右手に持っていたタダムネから声が聞こえた。
すまん。あまりにも手にフィットしていて、離すのを忘れていた。
久しぶりの畑だ!
イベント中は畑の、というか参加したクランのクランハウスなどは時間が経過していないらしい。
確かに黄金週間イベント中放置されていたら、育ち過ぎた野菜が大変な事になっていただろう。
世話係のトレント隊もイベント会場に居たからな。
個人参加していた【愛でるもの】のカフェはどうなのだろう?
あの店は、カフェだけどクランハウスのはずだ。
戦闘民族のココアや経験積みたい紫蘭は参加するって話してたし、実際に参加しただろう。
会ってないけど。
御祭り大好きリコンスは参加してたな。ただし、リイドとシアラは不参加だった。
生産職三人は参加。
他のメンバーはどうだったのだろう?
皆カフェ店員のイメージが強いが、結構な戦闘職だったよな。
「あ!やっと来たらー!」
うちの野菜畑に、作業着姿で良い汗を掻いている犬獣人が居た。
「はれひめ?何してる」
困惑を隠さないで声を掛けると、はれひめは心外な!と頬を膨らませる。
「イベント中のカフェへの納品の為に、畑の収穫をしてあげたんでしょ!」
「え?クランハウスは時間停止してただろ?」
「何もしなければ停止だけど、世話すれば普通に実るんだよ!」
そうだったのか。
その前に、うちの野菜ってカフェに納品してたっけ?
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