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黄金週間
第532話:まだかなぁ……
しおりを挟む戦闘終了の実感が湧かない俺は、ガルムに埋もれてイベント終了を待っていた。
その周りでレイ、咲樹、オーべも寛いでいる。
魔王部屋の扉は開け放たれているので、階段を上がって来る足音がよく聞こえた。
「いきなり大穴が空いたぞ!?」
部屋に飛び込んで来たジルドが叫んだ。
それに対して咲樹が「それ、もう私が言ったわ」と妙に冷めた目で応える。
「は?!」
不満満載の声と表情で一歩踏み出したジルドは……ハナサンの洗礼を受けていた。
俺には判らなかったが、汚れていたのだろう。
これは本当に判らなかった。ジルドの戦闘服は布製だから、色々染み込んでしまっていたのかもしれない。
ハナサンから解放され、驚いて何かを言おうとしたジルドを遮り、「もう僕が先に経験済みです」と素気無くレイが告げる。
魔王の部屋から1番遠い入口付近で真面目に戦っていたジルドへ、随分と酷い態度である。
すまん、ジルド。
でも俺達は既に驚き済みなのだ。
お前は所謂二番煎じと言うやつだからしょうがない。
それに、魔王側の勝利のワールドアナウンスが聞こえてから、大分時間が経っているしな。
1時間以上をダラダラと待っている俺達は、もう色々驚き語りつくしていた。
現実ではまだ10分経っていないのかもしれないが……。
因みにペット部屋に行ったユズコ達はまだ帰って来ていない。
そもそも帰ってくる気が有るのか謎だ。
「予定より早く一気に終わってしまって、てんやわんやなのでしょうね」
レイがボソリと呟いた台詞は、何に対してなのか謎だ。
妙にしんみりしていたのが気になったが、俺の本能が聞いてはいけないと囁いていたので放置決定。
ガルムに埋もれてヨミと戯れていたら、突然部屋の隅へ移動していた悪友達からどよめきと笑い声が起きた。
「凄いわね」
「何が起きたか解らないまま飛んだ異界人も多いだろうな~」
「これ、ガルムがやったってバレたらガルム教とか出来そうだな」
「ヴィン教なら入ります」
四人で固まって何やら見ている様子。
見に行ったら負けだ。
禄な事にならない。多分、いや絶対。
静かに観察していたら、四人の顔が一斉にこちらを向いた。
レイ以外がニヤニヤしているのが無性にムカつくのだが。
俺の不機嫌な顔に気付いたのか、レイがジルドと咲樹を蹴倒しながらこちらへと向かって来る。
いや、これ、咲樹のファンが見たら大変な図だよな。
俺の傍まで来たレイは、片膝を突いて画像を見せてきた。
「おぉう、見事な焦土だな」
何も無い、本当に何も無い真っ平らな地面だ。凹凸も無い、磨かれたように黒光りする地面。
「これが今の魔王城の周りの景色です」
「は?」
レイの指が画像を動かしていくと、そのうちの1枚に小さな魔王城が写っていた。
「イベントの掲示板に、戦闘放棄した異界人がアップしているようです」
レイが説明してくれる。
魔王城が小さく写っているという事は、中立地帯の街に居た非戦闘員が犯人なのだろう。
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