上 下
9 / 38
黄金週間

第514話:たまる、たまる

しおりを挟む



 リコンスが俺の視界に入るようにクルクルと回っており、まるでバレリーナのように金のふわふわスカートが広がる。
 多分何か言って欲しいのだろうが、興味が無いからスルーだな。

「ちょっと!何か言いなさいよ」
 綺麗にピタッと回転を止めたリコンスに、思わず拍手をしてしまった。
 満更でもない顔をした後、そうじゃなくて!と地団駄を踏むリコンス。
 コメディか?

「これ!リコの初めての作品なの!」
 あぁ、そうなのか。
 綺羅がリコンスに頼まれて作ったのかと思っていた。
「頑張った?な」
 疑問形になったのは、服飾は全然知識も経験も無いから、どれくらい凄いのかが解らないからだ。

「これ、素材も凄いんですよ」
 綺羅がリコンスのスカート部分を指差す。
「ヒラヒラの透けてる素材は、妖精の羽って呼ばれる素材で普段は虹色ですが、ここでは金色なんです」
 あ~見た事あるなぁ、虹色の方。
 その後、綺羅が延々と素材の話をしていたが、ヨミとネルを両腕で抱えて、二匹の背中に顔を埋めて聞き流した。



 その後、戦闘フィールドへ行く度に、パーティーバトルを申し込まれた。
 明らかに記念PvPなので、時間制限で受ける事にした。大抵は3分だ。

 死亡ペナルティが有るのに、リルの炎を受けてみたい、とか、ガルムの斬撃を受けてみたい、とか言う特殊性癖の方々は、他のパーティーメンバーが良いなら、との条件で受けた。
 一人だけ攻撃など面倒だから、広範囲攻撃しか出来ない事にしたのだ。


 黄金週間が半分を過ぎた頃、俺の黄金量は凄い事になっていた。
 魔物や魔獣モンスターを倒した分はクランとして登録出来るのだが、パーティーバトル分はパーティーの物になる。うちの場合は、俺一人しかいない。他は従魔だからな。

 装備を補強や補充する必要も無いので、黄金が減らない。
 むしろ綺羅や斗苫斗的や爺さん、今回はリコンスまで素材を欲しがったので、素材と黄金の交換で更に黄金が増えた。
 無償提供は、同じクラン内でしか出来ないシステムだった。嫌がらせか?



 目の前で敵――黄金蜥蜴ゴールデンリザードが黄金と肉に変わった。
 因みに仕留めたのは、プーリである。
 頭と尻尾を鷲掴みして、上空から急降下して地面に叩き付けてた。

「足は大丈夫か?」
 プーリに聞く。掴んだまま地面に激突してたからな。
 何が?と言うように、首をクルンと傾げられてしまった。
<プーね、つよいこなの>
 怪我が無いなら良いです。


 うちの子達は良い子なので、瀕死状態のモンスターを俺の傍に持って来る。
 遠くでアイテムになってしまうと、取りに行くのが大変だ、という気遣いだろう。
 倒した敵の大きさ自慢では無いはずだ。
 優しさのはずだ!

 ヨミちゃんの角に刺さってるのは成金兎リッチラビットかな~?兎の体、半分地面に引きずってるよ?
 水牛位ある兎を、中型犬位のヨミが角に刺して運んでいるシュール。

 リルが咥えて来たのは何?金色のプテラノドンに見えるのだが?
 ムンド?お前は絡んでるのか、絡まれてるのか?黄金蛇の首を咥えている。
 タダムネは背中に黄金鯉を載せている。

 シズカが両手で黄金亀を抱えて来たのには、少しだけほっこりした。
 それが黄金色したカミツキガメみたいな凶悪な姿でも、それがグッタリと瀕死でも、小さいというだけで俺は安心する。

<あのね~大きい虎倒したけどね~、運べないの~>
 テラから念話が届いた。
 いや、もう、お願いだから、皆様、少しはちょうしてくれませんかね。



────────────────
ええ。皆様の予想通りです(笑)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~

紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの? その答えは私の10歳の誕生日に判明した。 誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。 『魅了の力』 無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。 お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。 魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。 新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。 ―――妹のことを忘れて。 私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。 魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。 しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。 なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。 それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。 どうかあの子が救われますようにと。

処理中です...