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26:幼馴染み

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「久しぶりだね、僕の可愛いお姫様」

 20歳を過ぎた私にこんな言葉を掛けるのは、1人しかいないです。
「お久しぶりです、殿下」
 帝国の第三皇子であり、私の幼馴染みにあたる方です。
 幼馴染みとは言っても、年齢は3歳ほど離れておりますが。
 そのせいか、彼は私を『お姫様』と呼び、小さい頃からとても可愛がってくださいました。

「昔みたいに愛称で呼んでくれないのかい?」
 何をおっしゃっているのやら。
「何も知らない子供だから許されていたのです」
 今、そんな呼び方をしたらどんな誤解を周りから受けるか。

「2人きりの時なら良いだろ?」
 殿下……皇族ならではの感覚ですね。
「差し出がましいとは思いますが、部屋の扉は開けられておりますし、扉の外には護衛の騎士がおります」
 そんな不思議そうな表情しないでください。
「隣の間には、侍女が控えております。これは、一般的に2人きりとは言えません」
 声が聞こえる距離に人がいるのですから。

 見るからにガッカリとした様子の殿下です。
 でも、どこから噂が発生するかなんてわからないのです。
 私は『白い結婚』とはいえ、一度離婚している傷物令嬢なのです。
 他の方ならともかく、皇族である殿下が私と噂になれば、マイナス要素しかありません。

 5人もいる皇子の中で、一番冷静で頭脳明晰と言われている殿下です。
 そんな事に気付かないなど、この方に限りないはずなのに……おかしいですね。


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