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24:王都では……
しおりを挟む「いやぁ、さびしくなっちまったねぇ」
辻馬車の馭者が誰に言うでもなく呟く。
ホンの3日前までは、隣国に本店のある有名店が軒を連ねていたのに、今では3分の1ほどの店が閉まっている。
開いている店も、店先に『閉店のお知らせ』と掲示しているのが目立つ。
「何かあったんですか?」
お婆さんと孫らしき2人連れの、孫の方が馭者へと質問する。
10代前半位の女の子だ。
「王子が辺境伯のお嬢様と離婚したんだよ。辺境伯領は元々隣国の領地だからね。理不尽な離婚に怒って、この国を見捨てたのさ」
「この国に敷地があるのに、隣国の領地なの?」
「元々この国には、あの大河に橋を掛ける技術がないからな。世界会議とかいうので、あの川が国境だと決められてたんだよ」
女の子が軽く首を傾げる。
「この国に敷地があるって認識がそもそも間違っているんだよ、お嬢さん」
もう1人の乗客である商人らしき男性が会話に加わる。
言われた女の子は、不思議そうに更にコテンと首を傾げる。
「この国の人から見れば、岩山に囲まれ、魔の森に遮られた狭い領地に見えるだろうけどね。あの辺境伯領の元々の住人の半数は、魔の森を通り抜けられるからね。騎士とか、採掘を生業にしている俺みたいな男とかね」
マントをはだけさせ、屈強な腕を見せる。
「隣国の広い領地の一部なんだよ、昔からね」
商人の男はニッコリと笑う。
「私が子供の頃に、山に穴が空いたって大騒ぎになったねぇ」
お婆さんが懐かしむような表情をする。
「そうかい、あの頃の生活に戻っちゃうんだねぇ」
今度は少し悲しそうな表情で呟いた。
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なぜ半数なのか。か弱い女性、老人、子供は除くからですね。
勿論、か弱くない女性は通れますよ(笑)
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