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くまさんに出会った
しおりを挟む「お嬢さん、どちらへ?」
街1番の美人と言われている女が籠を持って、森の入り口に立っていた。
「婚約者が樵をしていますの。今日はお弁当を持って行く約束をしています」
籠を持ち上げて、頬に手を当てて小首を傾げ、少し頬を赤くして微笑む姿は、とても幸せそうで、とてもとても幸せそうで、無性に穢して壊したくなった。
耳元に揺れる白い貝殻のイヤリングが、妙に俺をイライラさせる。
「森には獣も居るから気を付けてな」
俺がそう声を掛けると、女は頷きながらも反論する。
「そんなに奥には行きませんから。ほら、木を切る音が聞こえてますもの」
女の言葉に耳を澄ますと、コーンコーンと斧が木を切る音が聞こえてきた。
「そうかい」
そう言って女を見送ると、俺は小屋へと戻った。
警備日誌に『大陸歴584年彩月10日 11:20 女が一人で森へ入って行った。止めたが婚約者へ弁当を届けると無理矢理行ってしまった』そう記載した。
「お嬢さん」
軽い足取りで先を急ぐ女に声を掛ける。
「あら、警備の方ね。どうかなさったの?」
振り返って質問してくる顔に、警戒心は無い。
この警備隊の制服は、森の中では圧倒的な信頼度があるのだ。
「忘れ物だよ」
俺がそう言うと、女は「え?」と目を大きくする。
意味が解らない、そんな顔だ。
そんな女の顔を、俺は拳で殴った。
吹っ飛んだ女は道の脇の草の上に横たわっている。
「うぅぅ……」
呻き声が聞こえてきた。
よし、死んでは居ないな。
俺は女を肩に担ぎ、弁当の入った籠を手に持った。
そのまま森の中を突っ切り、警備隊の小屋の裏へと出る。
今日は同僚が毛虫に刺されたと街の病院へ行っていて、明日まで帰って来ない。
人の気配が無いのを確認して、小屋の中へと入って鍵を掛けた。
そこからは、めくるめく官能の世界だった。
女は結婚するまでは純潔を守る派だったようで、俺が初めての男だった。
手に余る大きな乳も、細い腰も、むっちりとした尻も、全て俺が初めて味わうのだ。
泣き叫び、暴れる女を押さえ付け、自分の意のままに犯すのも、俺の嗜虐心を満足させた。
しばらく弄んでから、女を森の奥で解放した。
外は既に薄暗かったが、自分が行ける限界まで女を担いで行き、籠と女を放り出したのだ。
ワンピースは羽織らせたが、ボタンは弾け飛び、下着は付けていない。
女はただただ宙を見つめていた。
投げ捨てた籠から、弁当が転がり落ちた。
戦利品として食べれば良かったなと思ったが、既に泥が付いていたのでそれは諦めた。
このままここに居れば、夜行性の野犬や狼が証拠を消してくれるだろう。
その場では食べず、おそらく巣まで持って行く。
完全な証拠隠滅だ。
翌日、街の警備隊から隊員が訪ねて来た。
「街の娘が一人、行方不明になった。どうやら婚約者に弁当を届けに森に来たらしいが……」
隊員の話を聞いた俺は、態とらしくならないように気を付けながら「あぁ」と言って、警備日誌を持って来た。
「昨日、一人で森に入って行った娘さんが居たな。止めたんだが婚約者に会いに行くと言ってな」
言いながら、俺は警備日誌を隊員へ見せた。
日付と時間が書いてある。
「この後は?」
隊員に聞かれたが、俺は首を横に振った。
「森の見回りに行ったり、裏で薪割りをしたりで、ずっと小屋に居る訳じゃないからな」
だから知らないと、暗に告げた。
その後、森の奥で弁当の入っていた籠と、ワンピースの端切れだけが見つかり、点々と血液が落ちていたので、迷子になり獣に襲われたのだろうという事になった。
そのまま遺体も見付からず、事件は迷宮入りをした。
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