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39:正当な評価と報酬

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「まぁ、ボトン伯爵子息は六人も奥様が!」
 タイテーニアがレイトス大公の話を聞いて、驚いた声を上げる。
 そういえば、歴代の彼女が六人だったか、とタイテーニアは勝手に納得したが、オベロニスの更なる説明に驚いた。

「正妻があのシリー伯爵令嬢なのですか?」
「もう伯爵令嬢じゃなくて平民だから、単なるタバッサだよ」
 どうでも良い事を訂正してくる夫を、タイテーニアはムッとした顔で見る。
「そんな顔しても可愛いだけだよ」
 頬をつつかれたタイテーニアは顔が赤くなり、オベロニスを喜ばせた。


 その後、無事に細かい説明を聞いた。
「お一人は愛人なのですね」
 そういえばレストランなどに行った時、必ずデザートと飲み物を頼んでくれる人がいたな、と思い出した。
 ただしメニューは見せてもらえず、勝手に注文されるので、嫌いな物が出てくる時も多かった。

 どうやらタイテーニアとは好みが違うのか、わざと苦手な物を選ばれたのか、今となっては判らない。
 手を付けないと嫌味を言われ、我慢して食べる事も多々あり、微妙にありがた迷惑な令嬢だったなぁと遠い目をするタイテーニアだった。



 ボトンブランドが実はシャイクス伯爵領で作られた物で、贋物にせものシャイクスと呼ばれた物がボトン家の商品だと、王宮から正式に発表された。
 街には廃棄されたボトンブランドの商品が溢れた。
 細かく砕き街道の整備に使おう、という案が出る程の量らしい。

 その後、趣味の悪い黒い線の無い、シャイクスブランドの食器が売りに出された。
 廃棄された食器と同数の需要があるので、シャイクス領は嬉しい……を通り越して、本当の悲鳴をあげている。

 紅茶も、不味い茶葉の混じっていない、シャイクス領では当たり前の美味しい物が、市場に出回るようになった。
 チーズやバターは、名前貸しの牧場とボトン家の取り分が無くなり、庶民でもちょっと贅沢したい日に買える値段に落ち着いた。


「もっと安くても良いのに」
 店頭に並んだ金額を見てタイターニが呟く。
 ボトン家に卸していた時の10倍以上、売上だと渡されていた値段を足したとしても5倍以上の値段が付いている。
 食器など、諸経費として引かれていた加工代が無くなったので、20倍位の収入単価になりそうだ。

「これでもボトンブランドとして売られた時よりも安いのですよ」
 シャイクスブランド店の店長が笑う。
「チーズやバターは、他のお店との兼ね合いもあるので、これより安くは出来ません」
 キッパリと言い切られ、タイターニは肩を落とした。


 このシャイクスブランド店の店長は、シセアス公爵家のランド・スチュワートのランドールの息子である。
 貴族とは思えない位のお人好しで正直者のタイターニがかなうわけがない相手なのである。

「ロビン様の為のたくわえが増えると思えば良いじゃないですか。今なら、もう一人お子様が増えても大丈夫ですよ?」
 店長の言葉に、タイターニが笑顔で振り返った。

「そうだ!レアーに頼まれたんだった!何かとても柔らかい布が作れるようになった地域があって、子供服とか作ったらタイテーニアの子供に着せられるんじゃないかって。加工出来る人を紹介してください」
「そのお話、詳しく」
 店長の目がキラリと光った。


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