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29:類は友を呼ぶ
しおりを挟むシャイクス家の庭では、暖かい日差しを浴びながら可愛い次期当主が遊んでいた。
まだ半分青いトマトを指でつついて笑っている。
「あらあら。駄目よ、ロビン」
小さな手をそっと握り、タイテーニアが悪戯を止める。
「トマトが美味しくなくなっちゃうわ」
可愛い弟を抱き上げ、畑から離れた。
陽に透けると金髪に見える亜麻色の髪のロビンは、金髪である母親のレアーによく似ている。
対してタイテーニアは栗色で、茶髪のタイターニによく似ていた。
そして傍から見ると「お二人は本当によく似ていらっしゃいますね」となるのだった。
幸せそうに二人を眺める乳母に、タイテーニアも笑顔を返す。
「そういえば辺境に嫁いだ友人の子が、ロビンと同い年なのよ」
婚約者が大分年上で、学校を卒業せずに嫁いだ友人をタイテーニアは思い出す。
季節の挨拶の手紙しかやり取りをしなくなった、と少し淋しく感じた。
「あの女、病弱どころか子供が居るんじゃないの」
タバッサは、先程門前払いされたシャイクス家の入口を睨む。
同じ伯爵家だし、年も近いので友人だと言えば通れるだろうと高を括っていた。
しかし結果は、鰾膠も無く追い返されたのだ。
悔しくてそのまましばらく観察していたら、子供を抱えたタイテーニアが門まで出て来た。
シャイクス家には、タイテーニアしか子供が居ないはずである。
親戚が遊びに来ている様子もなく、屋敷には家族しか居ない。
使用人の子供と言うには、タイテーニアと腕の中の子供は似過ぎていた。
実家に帰ったタバッサがまずした事は、オベロニスの妻である女を調べる事だった。
年はタバッサより3歳下の18歳。
今年学校を卒業している。
オベロニスより5歳下になるので、学校で出会ったとかでは無いのは確かだ。
つい最近まで婚約者が居たが、相手の有責で破棄になっていた。
「本当は子供が居るのがバレたんじゃないの?」
馬車の中で爪を噛みながら呟く。
子供を地面に下ろし、一緒に走り去る二人の姿は、どう見ても家族そのものだった。
「オベロニス様は、これを知らないんだわ」
どうやって伝えようか、自分は公爵家を出入り禁止になっている。
そんな事を考えていると、シャイクス家の門が騒がしくなった。
窓から覗くと、一人の男が騒いでいる。
「だから一度話をさせろって言ってるだろ!どうせ公爵の女避けとかそんな理由で結婚して、何年かしたら白い結婚とか言って離婚するんだろ!?」
とても他人の家の前でする話では無い。
しかし、タバッサの興味を強く引いた。
門から少し離れた所で、タバッサは男に声を掛けた。
草臥れた服は、それでも貴族が着る服である。
歩いて来たのか、近くに馬車は無かった。
「こんにちは。先程のお話を詳しく聞かせていただけるかしら?」
タバッサは極上の笑みを男……ニーズ・ボトンへ向けた。
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