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姫は美人に決まってる

80:終わり良ければ全て良し

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 カラーーーーーンコローーーーーン
 下駄の音では無い。
 教会の鐘の音である。

 そう!今日は姫様の結婚式なんだよ!

 姫様、ちょっとぽっちゃりに磨きが掛かったけど、幸せそうだから良し。

「良しじゃねえわ!」
 考えが口から漏れてたらしい。なぜかアザトースに怒られた。
「えぇ?だって、姫様は隣国からこの国の騎士に嫁ぐ事になって、国交改善?されたんでしょ?」
 姫様が外交官になるんだって!


「改善しなければいけないほど、そもそも国交が無かったのですけどね」
「先せ……アルハト宰相!お久しぶりです」
 先生だ!彼には世話になったからか、無条件で安心する。
 出会った当初は黄色だった先生の三角ポインターが、今では緑だ。
 アザトースよりも青に近い。

「ヨッシー様、隣国の国王へ宣戦布告なさったとか」
 先生が楽しそうにしてるから、正解だったのだと安堵する。
 だって隣国の王様、人間としても親としても駄目な奴だったんだもん。



「自国へ帰って、隣国へ嫁ぐように言われました」
 まだBMI値25以下だった頃の姫様が王城から俺の所へ相談に来たのは、例の騎士と街デートを始める前だ。
 この場合のは、あの獣人奴隷の隣国である。

 痩せて、隣国の王に目をつけられたらしい。
 ……と思ったら、隣国の王──こっちは姫様の父親──が、自ら売り込んだんだと!はぁ?!
「珍しい食材を買い占めるのに、隣国に借金をしていたらしくて」
 半泣きの姫様が可哀想過ぎて、隣国へ特攻したよ。


 え?どっちの隣国かって?
 両方だ!!


 まず奴隷王国の方は、国中に居る獣人奴隷の契約やら刺青やらを全て、『返呪』や『自業自得』で返してやった。
 これだけだと命令した諸悪の根源が無傷なので、国中に蔓延していた負の気を目に見えるようにしてやった!

 はっはっはっ!
 王族や諸侯が悪臭の元のように視覚化されたんだぜ!
 そりゃ政権交代するよなぁ!!
 まともな人も居て良かった。

 おしどり夫婦が実は双方愛人が居た、とか、聖人君子のような牧師が実は犯罪者だったとか、予想外の発覚もあったのはご愛嬌。



 姫様の国の方は、『オマール』を使えないようにしてやった。『オマール』と『浄化』が使えない結界を隣国に張ってやったのだ。
 戻して欲しければ姫様を自由にするように、と脅したよ!
 最初は鼻で笑ってた国王や、姫様の兄や姉も、1日経たずに事の重大さに気付いたね。

 本来、魔王を倒せる程の勇者よ、俺。
 本当は凄いんだから。
〈やっている事は、姑息ですけれどね〉
 うるさいよ、アートモ。


 姫様の結婚承諾書を貰いに行った時の、あの王宮の惨状は二度と思い出したくない。
 シロもラッキーも、絶対に顔を出さなかったし。

 先に書類上だけ婚姻を済ませ、この国の住人となった姫様。元姫様か?
 それから例の騎士と愛を育み、街デートでうちのカフェに小金を落とし、BMI値25を越えて、今日の結婚式を迎えました!

 めでたしめでたし。

「野菜や果物の輸出とか、色々頑張ってるみたいですね、姫様」
 俺が言うと、先生が笑顔で頷く。
「終わり良ければ全て良し!ですね!」
 清々しい気分で、言葉と共に空へ向かって魔法を展開する。
 青空に、新郎新婦を祝う白い花弁はなびらが舞っていた。



「おまっ!俺が、どれだけ働いたと!」
 うん。手続き関係丸投げしたからね。
「ありがとう、アザトース。この幸せは君がいなければ成り立たなかったよ」
 アザトースの頭の上の三角が、黄色より少し赤みがかっていたのは気のせいだ。うん。


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