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姫は美人に決まってる

78:割れ鍋に綴じ蓋

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〈ヒューヒューだよ!〉
 何言ってんだ?ガイアは。
〈オレ様の流行は前なのだと気付いたので、ヨッシーが知らなくても気にしない事にした!〉
 いやいや。お前の声は俺にしか聞こえないのに、俺を無視すんなよ。

「凄い痩せましたね」
「はい。私、元々無理矢理太らされていたので、この位が好きなのです」
「俺、いや、私はもう少し、いやでも、その位も割と好き、いや、あの、良いと思います!」

〈うぅん。ダメよ~ダメダメ〉
 お前!純粋な素敵恋愛に発展するかもしれないのに、白塗り未亡人ネタにすんなよ!
〈これは知ってたか!〉
 喜ぶな、喜ぶな。今はそれどころじゃ無いだろうが。


「魔法どころではなくなってしまいましたね」
 フフッと大人の余裕で笑う魔法長は、見た目では無く良い男だと思う。
 俺もこうなりたいなぁ。

<おい、手紙だ>
 いきなり下から声がしたので、視線を落とす。
 前にも見た、帽子を被って背中に筒を背負しょっていて、筒の中に丸めた紙が入っている配達鼠がテーブルの上でお辞儀していた。

<おい、早く取れよ!>
 うん。ここで怒るのも前回と同じ。
 前回と違うのは、今回の宛先が俺ってところだな。
「可愛い」
 お辞儀しながら怒るって、ヤバイくらい可愛い。

<早く取れや、ボケ!>
 こちらが理解していないと思って、好き勝手言ってるなぁ。
「ありがとうな」
 お礼を言うと、小さな手でサムズアップしていった。
 間違い無く可愛い。


 鼠に癒されながら手紙を開くと、ボールスからだった。
『うちの騎士がそっちに行く』
 遅いわ!!
 とっくに来て、姫様と良い感じだわ!
 なぜ鼠に手紙を託した?
 騎士の足より、鼠の方が早いと思ったのか?

 脳筋だとなじれば良いのか、天然だと笑えば良いのか、馬鹿だと呆れれば良いのか、どれだ?
 まったく。これがアザトースだったら、確実に嫌がらせを疑うところだけどな。



「ヨッシー様!姫様の結婚相手のデブ専来ましたか?」
 アウト!色々アウトだよ!ボールス!
「デブ専なんて烏滸おこがましい!私なんてまだまだですよ!」
 いや、君も何かおかしいな。

「まぁ!では、私はどこまでなら大丈夫ですか?」
 姫様も、何その気になってんの?
 いや、恋愛の方じゃなくて、太る方ね。

「健康を害さない程度なら、良いと思います!」
 そうだね。そこ、大事。
 俺の横で、魔法長も頷いてるし。

「私の魔法は、水と植物ですの!食べ物には困りませんわ」
「俺の属性は土です!」
 君達、姫と騎士だよね?農家の跡取りとかじゃ無いよね?
 しかも騎士、「俺」に戻っちゃってるし。



 混沌としている室内に、魔法長が手を叩く音が響いた。
「とりあえず君はまだ、仕事中でしょう?終わったらまた来なさい」
 有無を言わさぬ笑顔で、デブ専騎士を追い出す魔法長。

「ボールス、貴方は国王陛下に報告」
 おそらく王様が居る場所を指差してるんだろう。
 ボールスも納得なのか、騎士の礼をしてから部屋を出て行く。

「姫様は、時間まで魔法の訓練しますよ」
 とても優しい笑顔だが、やはり逆らう事は許さない何かがある。
 亀の甲より年の功。素敵です、魔法長様。


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