上 下
65 / 81
姫は美人に決まってる

65:無理です

しおりを挟む



「無理ですね」
 両手を顔の前で合わせて、俺を拝むようにしている王様にキッパリと告げる。
「そこをなんとか!」
 片目を瞑ってウインクしながらこちらを見てくるチャラい王様に、もう一度「無理ですね」と断る。

 だって、あの相撲取り一団……では無く他国の賓客だった……をうちの屋敷に泊めろとか言うんだぞ!?
 ファミレスとか、ワンルームマンションとかタウンハウスとか、うちには守秘義務契約が必要な物が山程有るんだよ!

 そもそもお宅の魔術師様アザトースが凄ぉく嫌そうな顔してますけど?

「警護兼案内役のボールスが住んでるし、都合が良いでしょ?ね?」
 ウインクして首を傾げるチャラ男にイラッとする。
 都合が良いのはそちらであって、断じて俺では無い。


 もう面倒だしこの国出て、どこかの魔の森とか魔の荒野とか探して移住しようかな。あるのか知らんけど。
 今なら奴隷達と一緒に開拓するのも楽しそうだ。

 獣人と魔物のもふもふ王国建立!
 意外といける気がする。


「あー、ヨッシーが出て行く気満々になってるけど、大丈夫ですかね?陛下」
 アザトースが俺の心の機微に気付いたようだ。
 いや、あれは俺にかこつけて、姫を屋敷には絶対に入れないアピールか?
 どちらにしても、結果としては同じなので黙っておこう。

「え?あのお屋敷を出てくって事?」
 呑気だな、おい。んなわけあるか。
「国を、ですよ」
 本気なのかとぼけただけなのか判断のつかない王様へ、アザトースがすっごい冷たい視線を向ける。
 あ、凄い焦った表情でこちらへ顔を向けたから、王様は素だったようだ。


「嘘でしょう?そこまでする程あの一団が嫌なの!?確かにちょっと難ありな姫だけどさぁ」
 色々失礼だな、王様。
「エンゲル係数高そうだけど、そこはちゃんと国庫から出すから」
 ね?とか首を傾げて言ってくるが、ウザいよ。
「問題はそこじゃ無いですからね」
 うちのセキュリティ的な何かなんだよ。

「確かに居るだけで鬱陶しいし、場所を取るけどさ。あの屋敷広いじゃんか」
 いや、だから……。
「確かに姫はアレだけど、ちゃんとお手当て弾むから!」
 執拗しつこいな!
「だからうちはそういう問題じゃなくてだな!」
 守秘義務契約の事を説明しようとしたら、廊下へ通じる扉がバァン!と外側から開け放たれた。



「さっきから聞いていれば、お客様に対して失礼じゃないですか!」
 扉を開け放ったのはボールスだった。
 ボールスの後ろには、姫様達一団の姿も見える。
「確かに姫様はデブだしブスです!」
 おぉい!何言ってんの?ボールスさん!!

「居るだけで鬱陶しいし、ホンの少し歩いただけで息遣い荒くなるし、汗流れてるし、醜いですよ!」
 いや、誰もそこまで言ってないぞ。
 何気にお前が1番失礼だからな、ボールス。

「人を容姿で差別するなんて最低です!」
 うん。言ってる事は正しいとは思うけど、誰よりも姫の心をえぐったのはお前だと思うよ、俺は。
 ほら、姫様がお前の後ろで下向いてプルプルしてるし。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

処理中です...