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金儲けをしようじゃないか!
58:青天の霹靂
しおりを挟む今日は朝から夜だった。
どんより曇った日本晴れ。
いやいやいや。
童謡している場合じゃないぞ。
あるぅ日、森の中、クマさんに、出会ぁった
……違う。
その童謡じゃない。
動揺だ。
監禁されて衰弱していたタルトとマルリの両親が無事に回復したので、うちで預かっていた二人を迎えに来た。
あのギンギンギラギラ夫婦の兄夫婦だと思って、正直侮っていた。
ところがどっこい、とても上品で見目の良い夫婦が訪ねて来たんだよ!
顔が少し似てるような気がしないでもない気もするようなしないような。
偽物の可能性を疑うほど、それはそれはあの弟とこの兄が似ていなくて……。
「パパ!ママ!」
マルリが部屋に連れられて来た途端に駆け出した。
「マルリ!」
女性……母親がしゃがみ込んで走って来たマルリを抱きしめる。
うん。本物だね、間違い無く。
タルトは何も言わずに、ただ部屋の入口で立っていた。
いや、よく見ると目は今にも涙が溢れそうだし、手は小さな握り拳を作っている。
泣かないように、必死に我慢しているの だろう。
「タルト」
父親が両手を広げて、タルトを呼んだ。
「うああぁぁぁぁん!!」
大号泣しながら、タルトが父親に駆け寄り抱き着いた。
きっと妹に心配を掛けないように、ずっと気を張って頑張っていたのだろう。
そして感動の再会の場面なのに、俺は『こういう時は親が駆け寄って抱き上げるんじゃないのか?』などと、ちょっと斜め上の事を考えていた。
〈自分から行く事で、感情が出せたのでしょう〉
へぇ……そういうものなのか。
アートモはそういうのも分析出来るのか?優秀だな。
まあ個人差はあるんだろうけどな。
そしてよく見ると、タルトは母親似でマルリは父親似だった。子供達を抱き上げたまま夫婦で近寄り四人の顔が並ぶと、それがありありと判る。
うんうん、良かったね。
俺の素直な感動か保ったのはここまでだった。
家族の感動の場面の横で、いかにも仕事が出来ます!というオッサ……壮年の男性がスススッと近付いて来て、流れるように名刺を差し出されたのだ。
「初めまして。ワタクシ、ゴルト商会で責任者を務めておりますスエヒロと申します」
渡された名刺には、印鑑のようになっている「末広」の文字が左上に印刷されている。
これは俺にだけ翻訳で見えているのではなく、マークのような物になっていると思われる。そもそもこの国の言葉は、全てひらがなで見えるからな。
でもこの人、顔は完全にこの世界の濃ゆ~い顔だ。
〈ゴルトもドイツ語で黄金だし、召喚された人の子孫かもな〉
マジか!でもガイアの言う事だしなぁ。
〈ゴルト商会は、300年前に異世界から来たと言う青年が作ったものです〉
アートモがガイアの言った事を肯定する。
あれ?でも、タルトとマルリの両親が会長じゃないのか?
「この度は、姪孫を助けていただきありがとうございました」
オッサ……サンス・スエヒロさんが頭をさげてくる。
てっそん?
〈この方から見て、兄弟姉妹の孫にあたる方の事です〉
〈こいつ、マルリの爺さんの弟だろ、多分〉
なぜ弟限定?
〈会長がタルト達の父親として、おそらく本家なのでしょう。そしてこの方が分家でスエヒロを名乗るなら、会長の父の弟と予想されます〉
はい。了解です。
こんな時だけ仲良しだね、お前達。
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