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異世界生活始めました!

38:良い熊さんと悪い人

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 俺の休日終わった……。

 俺が投げたボールを抱えたまま気を失っている熊。
 力尽きてラッキーの背中から滑り落ちた熊と熊。
 気付かなかったけど、熊のお腹にしがみついてる子熊。
 多分、家族?
 お父さんとお母さんと子供と、おじさん?
 お兄ちゃんにしては、大き過ぎる。
 え?愛人とか?

<お友達、連れて来た!>
 前に俺が言った台詞を覚えていたようだ。
 だがな、ラッキーさんや。
 俺が言ったお友達とは、栗鼠リスとか兎とかだな、可愛い小動物でだな。
 …………。
 うん。
 今のラッキーの大きさから見たら、この凶悪熊も小動物だな。


 俺の投げたボールが落ちたすぐ近くに、この四頭が居たそうだ。
 で、一緒にボールで遊んだと。
 それはラッキーは遊んだつもりでも、実は蹂躙じゅうりんしてたりしない?
 大丈夫?

<うぅぅ……>
 ボールを抱えてた熊が気が付いたみたいだな。
 顔に傷があって、本当に怖い熊って感じ。
 ゆっくりと開いていく瞼。
 うぉ!目が緑!
 こっちの熊は目が緑なのか!

〈いやいや、鑑定しろよ、馬鹿〉
 ガイアに馬鹿呼ばわりされたんだけど!?
〈ガイアの言う通りです〉
 ちょっ!アートモまで!酷くない?
 それでも言われた通りに鑑定するのが俺だ。

「鑑定」
 目の前にパネルが出て、熊の情報が表示された。
『マーダーグリズリー
 凶暴な熊の魔物
 鋭い爪と牙での攻撃が主
 顎の力が強く、鉄の鎧なら紙同然』
 魔物でした。
 森に魔物が居たんだね。

 鉄が紙同然か~。
 それが三頭も居るんだよねぇ。
 いや、三頭プラス一匹。

 順々に目を覚ました熊達は、ボールを持った熊の所に集まった。
 不安なのか、興味深々なのか、周りをキョロキョロと見ている。
 この行動だけ見てると可愛いんだけどな。
 しかもまだボール抱えてるし。


<ねぇ、ヨシツグ!ここに住んでも良いよね?>
 ラッキーがとんでもない事を言い出した。
「ここって、この庭って事か?」
<うん、そう!>
「森の中の方が住み慣れてて良いんじゃないか?」
 今まで住んでたんだろ?
<狩場に行けなくなっちゃったんだって!>
 は?狩場?

 詳しく話を聞いたら、俺が買わなかった土地の一部に森があり、そこに瘴気が溜まって魔物が湧くらしい。
 結構な数が湧くから、そこを狩場にしてたそうだ。

 え~と。
 ごめんね?
 俺が敷地に柵を作ったから、森から出られないんだよね?

<魔物は、こちらに来たら嫌だから狩っていただけで、柵の中でも充分生きていけるの>
 あれ?顔は凶悪だけど、何か雰囲気が優しいな。
<お母さん、強いんだよ!>
 ずり落ちた熊に掴まっていた子熊が、凶悪熊に駆け寄り抱きつく。
 お母さん!?お母さんだったの?


 大人熊は、きょうだいだった。
 お母さん熊が長女で、妹、弟。
 お父さんは別行動というか、繁殖しかしないんだって。
 地球の野生熊と同じような生態だね。
 本来なら兄弟も別行動なのだが、瘴気の森があるので一緒に暮らしていたらしい。

 えぇと、瘴気の森の件はアザトースに報告すれば良いかな。
 それかあの不動産屋に「瘴気の森があるから買いません」って言うか。
 土地の所有者が責任持って処理するべきだよな!

 今まで熊さん達が処理してくれてたみたいだけど、本当ならあの不動産屋が定期的に管理するべき案件だ。
 ちゃんと管理もしてなかったのに、相場の10倍で売ろうとしたのか!


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