上 下
33 / 81
異世界生活始めました!

33:あちらの常識、こちらの常識

しおりを挟む



 俺の常識が通用しないと実感した。
 悪い意味で。
 隣の空き地を買おうとしたら、相場の10倍位の値段を吹っ掛けられた。
 単なる空き地だよ?建物も無いどころか、整地もされてないんだよ?

 屋敷が隣にあるから、絶対に必要なんでしょ?って足元を見たようだ。
 でも残念。
 こっちの方が木を切ったりしなくて楽だな~ってだけで、反対側の土地でも問題無いんだな!

 不動産屋で話を聞いた俺達は「前向きに検討します」と言って店を出た。
「まさか買うのか?」
 アザトースに聞かれる。
「いや、反対側の土地を買うけど?」
 だって俺、断ったじゃん。
「え?だって前向きに検討しますって言ってたよな?ヨッシー」
 あれぇ?


「俺の世界では、遠回しの断り文句なんだよ」
「はあぁ!?面倒くせぇな!」
 うん。まぁね。

 本当に前向きに検討するなら、「○○までにご連絡いたします」とか、次の約束をするからね。
 因みに「こちらからまた連絡します」は駄目な方だ!
 期日の無いものは、検討はするけどそれだけだよって意味だから。
 いや、俺のいた業界だけかもしれないけどさ。
 国会は100%次が無かった。


「それで、隣の森も買えるんだよな?」
 アザトースに確認する。
鬱蒼うっそうとし過ぎて買い手が無いって言ってたし、大丈夫じゃん?ほら、あそこの不動産屋」
 さっきの不動産屋より、小ぢんまりとした雰囲気だ。
 俺としては、こちらの方が好感が持てる。

 カロンカロンという、ドアベルの音もポイント高い。
「いらっしゃい」
 おぉ~!ちょっと優しそうなお爺さんだ。

「郊外の屋敷の隣の森を買いたいんだけど」
 お爺さんの眉がピクリとする。
「どうするんじゃね?」
「ある程度は切り拓いて、従業員の寮を建てるつもりだ。憩いの場として、森も残したいとは思ってるが」
 どこからどこまでの範囲を売ってくれるかによるけどな。

「ふむ……」
 お爺さんは後ろの棚の引き出しから、ガサゴソと地図を出してきた。
 カウンターの上にバサリと広げる。
「ここからここまでが、一応うちの持ち分じゃ。どれ位欲しい?」 
 俺の屋敷の横だけではなく、後ろの森も範囲だった。
 それどころか、最初に予定していた空き地の後ろの森も範囲に入ってる。

 うちの屋敷の敷地の3倍ありそうだ。
 言っておくが、うちの屋敷の敷地もかなり広いからな!
 あの巨体のシロとラッキーが走り回れる程だ。

「うわぁ、あの辺の森の殆どが入ってるのか!」
 正直、全部欲しい。
 森をちゃんと手入れして、従魔達が遊ぶのに良いよな。
 何なら、森に住んでも良い。
 鳥とかピンクスパイダーとか、森のが良くないか?


「どうですか?アザトース
 隣のアザトースに聞く。
 ここを買う金は、あの商人から分捕ぶんどった慰謝料だ。
 隣国の店と使用人は権利放棄したけど、純粋なお金は貰ったのだ。
 しかしその金額を俺は知らない。

「全部買うから7割でどうだ?」
「そりゃさすかに無理じゃ。せめて9じゃな」
「おいおい、あんな辺鄙な所の手入れもされてない森だろ?7.5」
「広さを考えい!単価は安くても総額はデカイわい!8.5!」
「えぇ~。うちはこっち側の空き地でも全然構わないんだよなぁ」
「くうぅ……8割じゃ!それ以上は無理じゃわい!それと、なるべく自然を残してくれ」

 おぉぉ!凄いな。
 俺だったら、言われた金額をそのまま払ってたよ。
 で、肝心の金額は謎のままだ。
 アザトースが払えない金額で交渉はしないだろうから、信用はしているけどさ。
 でも、教えて欲しいなぁ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

処理中です...