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異世界生活始めました!
29:目には目を、歯には歯を
しおりを挟む奴隷の獣人は、10歳位の男の子と、5歳位の女の子だった。
しかし治療院へ連れて行って話を聞き、実際は12歳と8歳だと知り、あの男は犯罪奴隷落ち確定だ!と思った。
兄の方が少し実年齢に近いのは、労働力だからだろう。
働く為には、それなりに食べないと動けないからな。
フアフアの尻尾は、犬なのか狼なのか。
隣国の商人だったあの男の所有物であるこの二人。
書類上は俺のものになっているが、奴隷契約が切れていないのだ。
変更するなら隣国へ行き、莫大な手数料を払って変更してもらわなきゃいけないらしい。
「クソだな、隣国」
この国では犯罪奴隷にしか施されない魔法による奴隷契約を、隣国では全獣人奴隷に行うそうだ。
こんなに小さな子供にまで、しっかりと奴隷印がある。
しかも目立つように喉にだ。
寝ている二人は、俺の浄化で綺麗にはなった。
しかし棒のように痩せた体は、どうしようもない。
痛々しい喉の奴隷印に触れる。
「こんな悪意の塊、付けた奴に返してやりたいよな」
本気でそう思った。
隣国では獣人の奴隷がどういう扱いを受けるか解ってんのに、この奴隷印を付けた奴がいる。
同じ目に合えば良い。
忘れていたよ。
俺、勇者召喚されたチートだった。
しかも500年分の機能が盛られてる。
〈おめでとうございます、ヨッシー様〉
呆然とする俺に、アートモが心のこもっていない祝いを言う。
〈おぉ!見事に光った!奴隷印って呪いみたいなモンだかんな!呪い返しだ!!〉
呪文も唱えて無いのに、呪い返し発動しましたよ。
妹の喉から奴隷印が消えました。
その前に、そんな呪文取得してねえわ!
〈多分オレ様からの力!よく小説とかであるだろ?魔法は思いの強さって〉
〈こちらでは、決まっている魔法を、条件が整ったら取得します。ですがガイアの能力ではなく、能力自体はヨッシー様の物ですね〉
〈ヨッシーが能力を取得するのに、俺の知識を経由してるから、俺の力で良くね?〉
〈それは違います。あくまで私達はナビゲーションシステムであり、能力の補助を……〉
「いやいや、もう何でも良いから!喧嘩しないの!!」
とにかく奴隷印消えた!万歳!
それで充分!!
そして兄ちゃんの方も消してやらなきゃな。
〈1回発動してるからな。呪文決めれば次から楽だぞ〉
なるほど。呪い返しじゃ人前で言えないし、解呪ともちょっと違う。
「返呪」
兄ちゃんの喉の奴隷印に触れながら、呪文を唱えてみた。
先程と同じように喉がパアァッと光り、奴隷印が消えていた。
同じように魔法を施した奴の所へ返ったのだろう。
奴隷契約魔法をした人も仕事だからしょうがない、と言う人も居るかもしれない。
だが相手が同じ人族だったら、ソイツはやらなかったよな?
獣人だからと、平気でやったんだよな?
そもそも獣人を見下してなければ、そんな魔法取得しないだろう。
だったら、同じ事を返されてもしょうがないよな?
だって俺の中では、この目の前の獣人兄妹より、隣国の人間のが価値が下なのだから。
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