12 / 13
間違いない!
しおりを挟む「失礼ね!平成生まれよ!」
どこかから聞こえた「昭和かよ!」の声に、咄嗟にツッコミ返したリナモモは、重要な事に気が付いた。
昭和と言う年号を知っているのは、間違いなく前世持ちだ。
もしかしたら憑依パターンかもしれないが、どちらにしても日本人としての記憶持ちだ。
「誰よ!バグ野郎!」
リナモモは立ち上がって食堂を見回した。
声は男だった、と声のした方向で顔を止める。
バッチリ目が合った後に、慌てて目を逸らしたのは、リナモモの最推しの公爵子息であるアンシャンテだった。
「マジか~~~」
リナモモは脱力して、椅子に座った。
まさかの、推しがバグである。
しかし、そうと解れば納得もした。
攻略対象がオネェな乙女ゲームなど、成立しない……事もない?
ちょっと楽しそうではある。
リナモモは急いで食事を済ませ、食堂を出て行くアンシャンテを追った。
追い抜きざま、本人にだけ聞こえる声量で「お前、放課後体育館裏な」と告げる。
「体育館、無いわよ!」
返って来た言葉に、リナモモは満足気に微笑む。
「体育館を知ってらっしゃるのね?」
この世界に体育館は存在していなかった。
「放課後、お時間頂けるかしら?」
リナモモの笑顔での問いに、アンシャンテは頷くしかなかった。
不安そうな表情をしている悪役令嬢のはずのシャルトリュー侯爵令嬢にも、笑顔を向ける。
「ご心配なら一緒にいらして」
なぜか公爵や侯爵よりも偉そうなリナモモだったが、反抗出来ない鬼気迫る雰囲気があった。
放課後、体育館裏ではなく、中庭の四阿で三人で集まった。
お茶とチョコレートとクッキーが用意されている。
「さすが貴族の学校ですよね~。私が通ってた学校は厳しかったから、お菓子とか学校内で食べられなかったんですよ」
リナモモがチョコレートを口に含み、紅茶を飲む。
「私の行ってたのは、所謂ヤンキー校でね、何でも有りだったわ。毎日火災警報器が鳴るし、校庭には族車が入って来るし」
「それなのにオネェなの!?」
「成人してからよ。大学を中退して、ヘアメイクの専門学校に入り直して、働き始めてからのデビューよ。言っておくけど、この話し方で可愛い物は大好きだけど、恋愛対象は女よ」
「え?もしかして、社会人だったの!?え?待って、いつから記憶あるの?ロリコン?」
「なんですってぇ!?このクソガキ!」
「あのぉ……全然お話が理解出来ないのですが」
悪役令嬢のはずのシャルトリューが、気弱そうに手を上げて二人を見ていた。
1
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~
インバーターエアコン
恋愛
王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。
ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。
「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」
「はい?」
叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。
王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。
(私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)
得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。
相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。
くたばれ番
あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。
「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。
これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。
────────────────────────
主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです
不定期更新
【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。
白霧雪。
恋愛
王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。
【完結】所変われば品変わる―後悔しても、もう遅い―
仲村 嘉高
恋愛
小国であるアフェクシオン王国。
その国の第二王女が、ぜひにと請われて大国のアッロガンテ国へと輿入れする事になった。
嫁いだその日に結婚式という、忙しない日程での婚姻。
その結婚式の場で、夫となる国王が叫んだ。
「お前は聖女ではなかったのか!?」
言われた王女は驚き、焦る。
「私は確かに、自国では聖女と呼ばれておりました」
しかし、国王は納得しない。
「それならばなぜ、治癒魔法が使えないのか」と。
王女の国と、嫁いだ先では『聖女』の定義が違っていた。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる