悪役令嬢の婚約者は頭がおかしい

仲村 嘉高

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バグは誰だ?

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「ど、どこから直せば良いのかしら?バグり過ぎててわかんない」
 ベッドの上でうつ伏せになり、四肢をバタバタしていたリナモモだったが、突然ガバリと顔を起こした。

「これってあれじゃない?悪役令嬢も転生者でざまぁを狙ってる!」
 前世で読んだ、小説や漫画の定番。
 ヒロインも悪役令嬢も転生者で、悪役令嬢が断罪されない為に話を変えちゃう

「だから悪役令嬢の髪がドリルじゃないし、メイクも宝塚じゃないんだわ!」
 口に出すと、尚更それが正解の気がしてくる。
「じゃぁあのオネェは、悪役令嬢に頼まれてやってるのかしら?」
 でもいくら婚約者に頼まれたからといって、公爵家の外聞が悪くなるような事を了承するのかな?と、一部疑問は残ったものの、リナモモの中ではバグは悪役令嬢になった。

 バグに元の役割を押し付けると、ざまぁが発生する。
 リナモモの前世知識の『定番ざまぁ』の設定だ。
 それならば悪役令嬢は無視して、推しの公爵子息に接触するだけだとリナモモは気合を入れた。



「どこまで一緒に行動しているわけ!?」
 悪役令嬢と離れた時に接触しようと、ほぼ1日後をつけ回したリナモモ。
 立派なストーカーである。
 そしてその結果。トイレ以外は常に一緒だった。
 しかも悪役令嬢がトイレに行っている間に、公爵子息もトイレに行くので、リナモモは接触出来ない。
 接触どころか、接近も出来そうもない。

「やっぱり、あの女は転生者だわ」
 ここまで完璧に避けられているのは、避ける理由が有るからに決まっている。
 両手を握り締めて、そんな事を呟いているリナモモは気付いていない。
 壁に隠れながら男子トイレを観察しているリナモモが、他の生徒の注目の的だった事を。



「リナモモ、何か悩み事は無いか?」
 ある日の通学時、義兄にいきなり聞かれたリナモモは、「は?」と間抜けな返事を返してしまう。
 何か言い淀んでいた義兄だが、意を決したように、リナモモの肩を両手で掴んだ。
「学校で男子トイレを観察しているんだって?」
「はぁ!?」
 間抜けな返事に、間抜けな顔まで晒してしまったリナモモだった。

 完全に学園内で「変な女」「変態」「痴女」というレッテルが貼られてしまったリナモモ。
 間違いなく、もう公爵子息の観察は続けられない。

 それどころか、今後他の男子とのあれやこれや青春ヤッホ~イ!な、お付き合いも難しくなった。

 定番の学校帰りに制服でカフェデートも、自転車の二人乗り(本当は駄目だよ)も、ファストフードでのポテトあ~んも出来ないのだ。
「あ、自転車もマ○ドも無かったわ」
 動揺していたリナモモは、何も考えずに、思った事をそのまま声に出していた。

 隣の義兄の眉間に深い皺が刻まれた事には、気付いていなかった。



_________________
更新が遅くてすみません。
どうもコメディにしようと気負いすぎて、逆に変な方向へ行きそうになり修正……を繰り返しております
(-_-;)
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