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その後の話
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しおりを挟む不貞の状態で王宮へ連行されたカミラと第二王子は、その場で王籍からの排除が決められた。
当然第一王子とは離縁となる。
「愛するカミラと離れるなど耐えられない!」
議会でカミラの処遇が決まった瞬間、第一王子は席を立ち叫んだ。
「では、ヨエル第一王子殿下も、一緒に市井にくだりますかな?」
議長……この国の宰相が第一王子へと問う。
正式な議会での発言である。後から気の迷いだった、と言っても撤回は出来ない。
「当然だ! 俺はカミラを愛している!」
男らしい宣言に、場からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
全ての手続きが迅速に行われ、1ヶ月も経たずに第一、第二王子はただのモンスとヨエルになり、カミラと共に郊外の一軒家へと放逐された。
王都へは、馬車で丸1日掛かる距離にある一軒家で、近くの村まで歩いて1時間程掛かる。
周りに家が無いのは、元々は牧場か農場を営んでいた家が、商売を辞めて家だけが残ったからだ。
石造りの頑丈な家がポツンと建っていた。
慎ましく暮らせば、三人で一生働かなくても良い程度の金子は持たされていた。
しかし生まれながらの王子二人と、贅沢を覚えた伯爵令嬢が、監視もいないのに慎ましやかな生活などするはずもなく……直ぐにお金は底をついた。
「辞める? 辞めるとはなんだ」
荷物をまとめている二人のメイドに、モンスが声を掛ける。
「え? だってもう私達を雇えるお金、無いですよね?」
メイドの一人が作業の手を止めずに答える。
「働きもしないで朝から晩まで遊んで、しかも高級なドレスだ宝石だって、馬鹿なんですか?」
もう一人のメイドが鞄を閉め、立ち上がった。
「お前達がいなくなったら、食事はどうしたら良いんだ?」
ヨエルがメイドに縋り付こうとして、振り払われた。
「知りませんよ」
ヒラリと躱す身のこなしが妙に軽い事など、愚鈍なモンスもヨエルも気付かない。
「愛する女性と楽しく暮らして行けば良いのでは?」
メイド二人の視線が、扉の方へと向いた。
ガチャリと音がして入って来たのは、だらしなく夜着を羽織っただけのカミラだった。
昨日の名残が身体中に散っている。
「うるさぃ、何?」
髪を掻き上げながら怠そうにしているカミラを見て、モンスとヨエルは眉間に皺を寄せた。
何だ、この阿婆擦れは。
昨夜までは、あんなに愛おしく、可愛く、唯一の存在だと感じたのに。
モンスもヨエルも、同じ事を考えているのが判り、メイド二人がキャラキャラと笑い声をあげる。
「どうしたんですかぁ? 愛しの奥様ですよぉ」
「何でしたっけ? 世界一可愛い俺のカミラ、でしたっけ?」
笑い声をあげながら、メイド二人はトランクを持ち、カミラの両隣へ並ぶ。
荷物を持って、古い床の上を移動しているのに、足音1つ鳴らさない。
その異常さに、ここに居る三人は気付かないだろう。
カミラの両手を左右から持ったメイドは、それを自分達の目線の高さまで持ち上げた。
「魔封じの腕輪です」
右側のメイドが告げる。
カミラの腕には、一見装飾品にしか見えない腕輪が嵌っていた。
「一生外れません」
左側のメイドが告げた。
右と同じ腕輪がカミラの左腕に嵌っていた。
「腕を切り落としても、今度は足に移るだけです。足を切ったら首へ」
「首を切り落とした人はいないので、その時はぜひ王宮へ連絡を」
「検証に来ますので」
最後の言葉は、二人で声を揃えて言った。
どこ迄が本気で、どこ迄が冗談なのか……いや、全て本気なのだろう。
カミラの腕を離した二人のメイドは、軽い足取りで家を出て行った。
すぐにヨエルが追い掛けて玄関から外へ出たが、いくら見回してもその姿はどこにも無かった。
周りは平原で、遮る物の無い野中の一軒家なのに、である。
モンスとヨエルは、生まれて初めて自分で井戸から水を汲み、顔を洗って体を拭いた。
絞ったはずの布はビシャビシャで、体が冷えて寒いが、文句を言っても他にしてくれる者はいないので、黙って作業した。
台所へ行くと、三人分の朝食が用意してあった。
モンスは何も言わず、席に着いて朝食を食べ始める。それを見て、ヨエルも席に着いた。
二人が食べ終わる頃、まだ汚れたままのカミラが台所へと入って来た。
「なんでこんな所で食べてんのよ。食堂で待ってたのに」
二人が身支度を整え、食事をしている間、カミラは食堂で食事が出て来るのを待っていたらしい。
既に食べ終わっていた二人は、カミラが食事をする様子を見ていた。
さすがに肘を突いたり、零したりはしないが、カトラリーが食器にぶつかる音がするし、物を飲み込む大きな音がする。
まるで貴族の子供のような食べ方だった。
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恋愛小説大賞での投票、ありがとうございました。
最終結果はまだですが、おそらく私の作品の中では、色々な大賞の中で1番高い順位だと思います(*^^*)
応援ありがとうございます!
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