上 下
19 / 20

19:閉ざされた世界 side.レグロ

しおりを挟む
胸クソ注意!
今までの事のレグロ視点です。
───────────────



 突然家を追い出された。
 アレンサナ侯爵家には、俺しか後継者がいないので、何をしても許される……はずだった。


 レヒニタと付き合い出した時、誰も何も言わなかった。
 友人達は、家格の合わない相手と懇意になると、親や執事に注意されたと愚痴っていたが、俺はそんな事は一度も無かった。
「やっぱり侯爵家の跡取りとなると、俺達とは違うんだな」
 そう言ったのは、同じ侯爵家でも三男だからと伯爵家に婿入りが決まっている男だった。

 そうだ。カリナはコイツの家で家庭教師をしていたな。
 父が再婚相手にと勧めてきたカリナ・フォルテア。
 結婚して1年で別れたとか、女として欠陥があるとしか思えない。
 実際に見てみると、地味な女だった。
 祖父の命令だし、仕方が無いから結婚してやった。


 それから色々有り、カリナをにしてやろうとしたのに、使用人と一緒に失踪しやがった。
 祖父に反対されたので、離婚も出来なかった。

 そのうちに、レヒニタが子供を産んだ。
 正直どうでも良いし、夫婦ではないので俺の子として届け出る気は無い。この頃には全然魅力を感じなくなったしな。

 その代わりにと、乳母は若い女を雇った。
 乳母の母乳が出ないとレヒニタは文句を言っていたが、それはお前がやれば良いだろうが。


 乳母は、夜は俺の世話を熱心にしていた。男爵令嬢だったので、処女だった。
 その時の様子とか色々見て、レヒニタが嘘を吐いていたのは間違い無かった。
 尚更、レヒニタへの情が消えた。

 それとは別の使用人がベッドに忍び込んできたので、ありがたくいただいた。この女はすぐに妊娠してしまい、使えない奴だと思ったが、男爵家出身だったので追い出さないでやった。
 この女も処女だった。
 やはり結婚相手は貴族の方が良い。



 有意義な国王陛下との茶会を済ませ、上機嫌で屋敷に帰ると、使用人が誰も迎えに出て来なかった。
 ご主人様をないがしろにする使用人など、クビだクビ!

 ん? 奥の応接室の前に警備兵が立っている。
 誰か客でも来たのか?
 だが侯爵家の俺よりも上の立場の奴など居ないだろう?
 立場の違いを解らせてやろうと態と足を高く上げて歩き、足音を立てながら部屋へ踏み込んだ。


 なぜ、お祖父様と父が居る?
 まさかソファに座っている華やかで上品な美人は、のカリナか?
 胸は大きいのに胴回りは細く、腰には適度な肉がついて色っぽい。
 いや、しかし抱いている子供は何だ!!

 ソイツが侯爵家の後継者だと?
 俺の子供じゃ無いのなら、侯爵家と無関係だろうが!
「そんなどこの馬の骨ともわからん相手との不貞の証拠を、侯爵家の後継者にすると言うんですか!? それならば俺の子の方が相応しい!」
 には、俺の子がいるからな!



 どこの馬の骨などではなく、カリナの横に居た男は再従兄弟はとこだった。
 勝手に勘違いして警備兵に取り押さえられたレヒニタのとばっちりで、俺まで警備兵に捕まった。
 ふざけるな! 俺を誰だと思ってる!

 あぁ! カリナ! お前だけは、妻のお前だけは俺の味方だよな?
 目が合ったカリナは、それは美しく微笑んだ。
 やはりお前は俺を愛しているんだな。
 俺に相手にされなかったから、淋しくてその男と浮気したんだな。大丈夫だ、許してやる。
 俺はカリナに微笑み返した。

「さようなら。むすめさんと仲良くね」
 カリナが俺に別れの挨拶をする。
 馬鹿な事を言うな。
 むすめ? それは書類偽造が発覚して認められなかったと言ってただろう?
 それなら、俺とレヒニタは他人だ!



 何も荷物を持たずに連れて来られたのは、ほんの数時間前まで居た場所だったが、いつもの豪華な部屋ではなく、奥の裏口に近いひっそりとした場所だった。
 しかも今回は、国王陛下は居なかった。
「突然こんな所へ連れて来て、何のつもりだ!」
 部屋に入って来た男を怒鳴りつけてやった。

「俺を誰だと思っている!」
 いつものように、手厚くもてなすのが礼儀だろうが! しかもレヒニタの子供なんか放置で良いのに、菓子など出してやってる。
 俺の子供が腹にいる男爵令嬢にこそ、温かい飲み物と柔らかいクッションを出せ! 気の利かない奴だな!
「子供も可哀想だろうが!」
 更に怒鳴りつけてやったら、溜め息を吐かれた。

「もうすぐ迎えが来るから、大人しく待っていろ」
 生意気な男はそう言うと、部屋を出て行った。
「王太子殿下に対して、不敬にはなりませんか?」
 男爵令嬢が顔色悪く聞いてきた。さすが貴族だな。王太子の顔が判るのか。
 正直、俺は興味が無いから覚えていなかった。


 王太子については、よく国王陛下に相談された。
 王妃に似て小賢こざかしい男だと、陛下が愚痴を言っていたのだ。
 見た目も王族にしては地味で威厳が無いと嘆いていた。

 俺みたいに華やかで、人に好かれて注目を集める息子が良いと、アレンサナ侯爵家が羨ましいと、何度も陛下に言われた。

 確かに地味だったな。
 俺のように魅力的な人間でないと、人々を指導するのには向いていないのにな。
 可哀想な男だ。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

王妃はわたくしですよ

朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。 隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。 「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」 『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。

(完結)お姉様、私を捨てるの?

青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・ 中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。

完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。 しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。 一体どういうことかと彼女は震える……

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

処理中です...