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その後のお話 ※一人称になります
07:王家の場合 後編
しおりを挟む「公爵家の為に経済を回したいの。王族、邪魔」
オリヴィアのその一言で、王族は全ての権限を失った。
単なる象徴として王家が残ったが、今後は何の功績もあげていない第二王子以下は、公爵にはなれなくなった。
今までは王子というだけで、無条件で公爵になれたのに。
王族の血筋の公爵家は全て監査が入り、殆どが降爵し、酷いものは褫爵した。
公爵家のままであっても、頭の挿げ替えは行われた。母の実家はこれに当たる。
「新しい宝石が欲しいの」
「しばらく外交は無いので、必要ありません」
「学園の入学式に着る服が欲しい」
「議会に申請してください。多分通りませんけど。制服で事足りますから」
「街で評判のお菓子が食べたい」
「御自分に割り当てられたお金で、侍従に業務外手当を払って頼んでください。勿論、お菓子の代金も御自分でお支払いください」
王家として外交上必要な物は買って貰えるが、贅沢品は割り当てられた自分達の金で買うようになった。
どちらか微妙な物は議会に申請して、許可が出たら買って貰える。
王太子は王族としての教育を受けるが、他は上位貴族と同等の教育だ。
基本は王立学園に入学する。
オリヴィアの作った学園に入学するには、成人後に国庫に差額を返金する必要がある。
王家は、民の税金で生きている。
「金が欲しければ働け」議会にはそう言われている。
しかし今は外交しか仕事のないお飾りなのだから、贅沢など出来るはずがなかった。
今まで湯水のように金を使い贅沢な生活をしていた王妃や王子に王女は、新しい制度に馴染めないようで文句ばかりを言っている。
「働けと言うなら、もっとドレスを作らないと出来ませんわ」
「孤児院に慰問?そんなお金があるなら、私の為に使うべきよ!」
「公爵になりたいなら功績を残せ?王族というだけで、功績だろうが」
議会から、前回の申請への答えと、日々の不満への説明をする使者が来て、尚且つ仕事の提案までしてくれたのに、王妃達は全てを拒否するだけだった。
「ドレスを作りましょう。ただし、外交で8ヶ国周ってくださいね。大丈夫ですわ。全て離れた国ですから、同じドレスを着てもバレませんので」
使者の後ろで書類を持って控えていた人物が、前に出て来てそう告げた。
「8ヶ国なんて周れませんわ!」
「ドレスを作ったら働くのでしょう?拒否は許しません」
側に控えていた侍女に引き摺られ、王妃が部屋を出て行った。
ドレスの採寸だと言われていた。
「さて、次は王女様ですね。来期は、孤児院へ使われる予定だった予算を貴女に使いましょう」
王女の顔がぱあぁと明るい笑顔になる。
「そして、貴女に使われるはずだった予算を孤児院へ回します」
「え?」
「ありがとうございます。01つ桁が違いますので、これで子供達の教育に力が入れられますわ」
「今でも足りないのよ!?無理よ!」
「noblesse oblige。高貴であるゆえ特権を得ている者は、それに応じた義務を負うべきですのよ。持たざる者から更に搾取するなどありえませんわ」
拒否するなら、1年間孤児院での生活を強制します、と言われ王女は青褪めた顔で頷いた。
「王族というだけで功績。そうですわね。貴方は最北の国の王族へ婿入りしていただきます。年は15歳ほど上ですが、間違いなく公爵家ですわ。良かったですね」
「な!」
「旦那様が熊の魔獣に殺されてしまって、まだ後継もいないのに困ってらしたの。再婚ですから、こちらの学歴は問わないそうですので、来月には向かっていただきますわね」
「そんな母上と年の近い相手など!」
「そうなのです。なので早く後継を作らなければいけないので、本当は明日にでも来て欲しいそうですのよ?」
行かないという選択肢は無いのだと、ようやく王子も理解したようだ。
「王陛下、よろしいですわね?」
オリヴィアがとても美しく微笑んで、こちらを見た。
王太子の子供達は、オリヴィアの学校に入学させ、お飾りではなく外交以外の仕事も出来るように教育するらしい。
その頃には、オリヴィアを含む筆頭公爵家の怒りが収まっている事を願う。
終
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これにて本当に終了です。
最後までありがとうございました。
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