【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高

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その後のお話 ※一人称になります

02:元男爵家次女の場合

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 ウィッキーと結婚した
 侯爵家三男と男爵家次女が結婚したら、単なる平民よね。
 しかもオリヴィは怒らせてはいけない相手だったらしく、男爵家から追い出される事になった。

「金目の物を持ってったら、泥棒だと訴えるからね」
 男爵の奥さんが鬼の形相だわ。
「ウィッキーからのプレゼントもですか?」
 暫く考え込んだ後「それだけは良いわよ」と言った奥さんは、根は優しいのだと思う。
 平民なら、自分の損になる事は絶対に了承しないからね。

 ドレスは無いから、アクセサリーだけね。
 売ればそれなりの金額になるだろう。
 家はママの家がある。
 男爵パパがママに買った物だけど、ママが死んだから私の物になった。
 貴族生活が安定して生活の心配が無くなったら売ろうと思ってたけど、売らなくて良かった。

 もしかしてウィッキーの愛人になった時に使うかもって思ってたんだよね。

 荷物を持って門を出ると、ちょうどウィッキーが着いた所だった。
 荷物もあるし乗せてもらおうと思ったのに、馭者は無言でウィッキーを降ろして去っていった。


 ママの家は、ちょっと埃っぽいけど住んでた時と変わらなかった。
 すぐに使える!
 水を汲んで来て、掃除しなきゃだわ。
 窓を開けて空気の入れ替えをしているのに、ウィッキーはまだ入り口に立っていた。
「何してんの?入れば?」
 間取りを説明しても反応しない。

 あ~貴族のお坊ちゃんって、こうなると面倒臭い。
 仕事を見つけさせたら、追い出そう。
 独り身になれば、貴族は無理でも羽振りの良い商人の愛人くらいにはなれるだろう。
 私には、ママ譲りの美貌と愛嬌があるからね!



「離婚出来ない?!」
 役立たずのウィッキーが、なんとか計算の仕事に就いたので、こっそりと市役所に離婚手続きに来たら職員に駄目だと言われた。
「王命による結婚だろ。離婚にも王の許可が必要なんだ」
「平民なのに!?」
「アンタ達、元貴族だろ。何かの罰での結婚じゃないの?たまにいるんだよね、元貴族の平民夫婦。仲が悪くても死んでも別れられないって罰を受けた奴等」

 職員が慣れるほど、平民に落とされる元貴族夫婦がいるの?
 大丈夫?この国。

 呆然としていたら、後ろから肩を叩かれた。
 振り返ると、平民時代に色々と贈り物をしてくれた大きな商家の息子だった。
「ミリアム?久しぶりだな。相変わらず可愛いな」
 久しぶりに褒められて、私は満面の笑みを浮かべた。


 ウィッキーとは夫婦になったけど、寝室は別だし、処女は高く売れるとママに聞いていたから、まだ関係を持っていなかった。
 それに結婚してからウィッキーは私に興味が無くなったようで、一切触れてこない。

 商家の息子はテッドという名前で、私の処女を高く買ってくれた。
 元貴族の旦那とは離婚出来ないけど愛は無いと説明したら、愛人にしてくれると約束してくれた。
 テッドが処女を買ってくれたお金と、ウィッキーからのプレゼントを売ったお金で、家を買った。
 ママの家より狭いけど、新しい。
 旦那ウィッキーも住んでいる家でテッドとやるのは落ち着かないと思ったから。


 ママの家は、ウィッキーに貸す事にした。
 周りの相場と同じ金額の家賃を貰う契約を交わした。
 新しい女と住む事になったら家賃を上げる約束だから、今のところは独りで住んでいるみたい。

 テッドは、私を愛人にはしてくれなかった。
 父親に反対されたそうだ。
 ここでもの影響があったみたい。
 愛人にはしなかったけど、たまにコッソリお金を払って私を抱きに来る。
 そのうち、テッドの紹介だと男が訪ねて来るようになった。

 ウィッキーからの家賃収入と、男達からお金を貰って生活は出来ている。
 贅沢しなければ、死ぬまで困らないだろう程度のお金は貯まった。


 家賃のお礼に、一度だけウィッキーとやったけど、今までの誰よりも下手だった。
 別居して正解だったわ。



―――――――――――――――
本人無意識の娼婦落ち(笑)
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