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婚約
しおりを挟む「あと、一応教えて差し上げますね。今、公爵家には30件以上の婿入りの話が来ておりますの」
「え?」
呆けた顔のウィッキーの額を、オリヴィアは扇でつつく。
「うちは、元々相手の爵位は問いませんの。でも他の高位貴族が五月蠅くて、しょうがないから貴方を選んで差し上げたのですよ。そもそも公爵家から打診などしておりません。そちらから懇願されたのです」
ウィッキーの自信が根底から覆された。
「それに、あれから何年経っていると?当時は次男でスペアだった方々も、今では殆どの方が婿入り先を探してますわ」
後継者予定の長男が初等部を卒業すれば、次男はスペアではなくなる。
母方の実家を継ぐとか、親が持っている他の爵位を継ぐなどは、運が良い一部だけだ。
殆どが自力で爵位を貰える騎士を目指すか、婿入り先を探すのだ。
そしてここへ来て超優良物件の筆頭公爵家の婿の座が空いた。
婚約破棄が受理された当日には、盛りに盛った釣書が沢山届いていた。
「自力で爵位を得ようと文官や騎士を目指しておられる方が多いのが悩みの種ですが、私の邪魔をしないのなら優秀な方でもしょうがないですわね」
ツンツンツンと、ウィッキーの額を扇でつつきながら、オリヴィアは話を続ける。
「婚約しているのに平気で浮気をする戯け者よりは、遥かにマシですものね」
最後にペシンと音をさせて、ウィッキーの額を扇で叩いてから離れる。
「そうだわ。忘れておりました。私との婚約が破棄された瞬間、貴方とあの男爵家の次女との婚約が申請されてますのよ。何も問題無いので、受理されるでしょう。好きな方と結婚出来るのですもの、嬉しいでしょう?」
ウィッキーの顔から血の気が引いていくのが、他の者から見ても判った。
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