【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高

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「え?何で学園に娼婦がいるんだ?」
「駄目だよ!制服着てても顔のシミでバレるんだから」
「貴族の令嬢がこんなにシミだらけのはずない。仮に活発な令嬢だとしても、ここまで肌は荒れてないよなぁ」
 男達は無意識にミリアムをけなしていた。

 貧乏で平民と変わらない生活をしている男爵家なども存在したが、ミリアムは中途半端なので、娼婦のように見えたのだ。
 髪や爪は手入れされているのに、肌は長年の日焼けと手入れ不足が見て取れた。
 貧乏な貴族ならば、髪や爪にも金は掛けられない。

 それに、貧乏とか爵位とか関係無く、普通の貴族令嬢は胸元が見えるほどブラウスのボタンを開けない。
 ドレスを着た時にこれでもかと強調する胸元だが、隠す時は徹底して隠すのが貴族のたしなみだから。


「しかし娼婦なら、もう少しこうボインとしたボリュームが欲しいですな」
「いやいや、そこは形でしょう。釣り鐘オッパイとかたまらんですよ」
凹凸おうとつの少ない方が倒錯的で萌えませんかのぅ」

 食堂内の全員が思った。
 それこそ教師陣や、出勤して来てもやる事が無くて厨房でお茶をしていた調理人まで全てが。
『お前達の性癖など知りたくなかった』と。

「……あの、大変申し訳ありませんが宰相様、授業中なのですが」
 3年の授業を受け持っている教師がエロオヤジ全開の三人に声を掛ける。
 その呼び名に生徒達の視線は、教師と三人の間を何往復もしていた。



「宰相、財務大臣、教育長、セクハラですわよ」
 食堂に凛とした声が響いた。
「オリヴィ……ェア?」
 どう呼ぶのか迷ったのか、中途半端な発音でウィッキーがオリヴィアを呼んだ。
 呼ばれたオリヴィアは、扇を開いて口元を隠し、ウィッキーを睨みつけた。

「前にも言いましたが、勝手にファーストネームで呼ばないでくださいまし」
「じゃあ許可を出せよ!」
「なぜですか?」
「婚約者なんだから当たり前だろうが!」

 オリヴィアがキョトンと目を丸くした。


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