【完結】貴族の矜持

仲村 嘉高

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始まり

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 翌日、顔を腫らしたウィッキーが学園に登校すると、教室内が妙にガランとしていた。
 そして、教室内にいる生徒達もどこか落ち着かないようで、居心地が悪い。
 普通ならばわかりやすく殴られた痕のあるウィッキーに、生徒の誰かが声を掛けてくるだろう。
 それが無いのだ。

 しかしよく見れば、教室内には高位貴族と呼ばれる地位の家の者が誰も居なかった。
 自分と同じ侯爵家や公爵家は勿論、伯爵家も力のある家ほど来ていない。
 自分に気軽に話しかけて来れる生徒が居ないのか、とウィッキーは深く考えずに席に着いた。


「授業が無くなった?」
 いつまでも来ない教師に生徒の不安がピークに達した頃になり、やっと学園の職員が教室に来た。
「いえ、正確には、教室ここでの授業が無くなりました。講堂に全生徒を集めての授業になります」
 職員の説明に、生徒達は近くにいた他の生徒と顔を見合わせる。

「講堂に全生徒って、そんな広い講堂ありました?」
 一人の女生徒が手をあげて質問すると、職員は顔を逸らしゴニョゴニョと何かを口にする。
「は?聞こえないぞ!」
 ウィッキーが怒鳴りつけると、職員はウィッキーを指差し睨みつけた上に、更に大声で怒鳴りつけてきた。
「お前のせいだろうが!お前のせいで!!学園の管理不行き届きだと公爵家から抗議が来た上に、オリヴィア様が退学なされたんだ!同派閥と中立派の貴族の殆どが辞めたぞ!」
 何を言われているのか理解出来ないウィッキーは、ただ目を見開いていた。


 講堂に移動すると、通常の2クラス分程の生徒数しか居なかった。
 さすがに席が少し足りなくて、職員が椅子を運び込んでいると、数人の大人が講堂内へ入って来た。
 全員が違う服装だが、どこかの家の従者であるのがわかった。

 1学年4クラスあるはずなのに、残りの生徒は何処へ消えたのか。
 その謎は、従者達に明かされた。
 それぞれが自分のつかえる家の生徒に近付き、家に帰るように促したからだ。

「とりあえず退学するかは保留ですが、暫くは登校せずに、様子見をなさるようにとの事です」
 ウィッキーの近くの女生徒に、従者が説明している声が聞こえてきた。
 女生徒はウィッキーをチラリと見ると「わかりました」と席を立ち、教室を出て行った。
 職員の運び込んだ椅子は、無駄になった。


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