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侯爵家三男
しおりを挟む「お前は何もしなくても安泰だから良いよな」
兄である侯爵家次男に言われるたび、『だったら代わってくれよ』と三男のウィッキーは毎回思っていた。
まだ異性を意識しない年齢で、公爵家への婿入りが決定した。
長男は侯爵家を継ぐ為に婿に出せるはずもなく、次男を婚約させるにはまだ時期尚早だった。
長男に何かあった場合は、次男が家を継ぐ必要があるからだ。
婿入りさせるとしても、せめて10歳まではスペアとして確保しておく必要があった。
公爵家が婿に希望することは、『健康で後継ぎを作れること』そして『公爵の邪魔をしないこと』だった。
優秀な婿など必要無いのだ。
公爵家としては、後継である娘の邪魔をしなければ、それこそ子爵家の子息でも良かったのだ。
ただ周りがそれを許さなかったので、打診のあった侯爵家三男に決めたに過ぎなかった。
それなのに何を誤解したのか、ウィッキーは自分以外に公爵家へと婿入り出来る人間が居ないと思い込んでいたのだ。
他の侯爵家や伯爵家には、三男が居ない。
だから何をしても、自分を婚約者から外せないと、婚約者である公爵家令嬢を軽く見ていた。
そのため、王立学園高等部に入学して早々に、男爵家の令嬢と親密な関係になったのだ。
「家の力しか魅力の無い残念な女」
事あるごとに、ウィッキーは婚約者をそう貶した。
本人の前ではさすがに言わなかったが、人目がある所でも気にせず、愛人である男爵令嬢へそう言って聞かせていた。
「それに比べて、お前は可愛いし素直だ」
そう愛人を持ち上げていた。
傍から見れば、貴族のマナーもまともに覚えていない、服をだらしなく着こなす男爵令嬢よりも、ウィッキーの婚約者の公爵令嬢の方が格段に上だ。
それがわからないほど、ウィッキーは愚かで残念な人間だった。
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