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31:残念な新発見
しおりを挟む驚く事に、ルロローズが毒草での訓練を止めて薬草や野菜の種で練習するようになったら、本当に適性がみるみる上がった。
「緑属性は最終的に治癒魔法に到達しますからね。毒草とは、本当に相性が悪かったのかもしれませんね」
教授の所で、伯爵夫人とアダルベルト、そしてフローレスの四人で、ルロローズの成長の話をしていた。
「今まで、緑属性の訓練を毒草でやるような者はおらんかったからなぁ」
「大発見ですわね、教授」
「まぁ、この先も役に立たなそうですけどね」
アダルベルトが呆れたように言うのに、他の三人は苦笑するしかない。
教授が言っていたように、発芽訓練に毒草を用いる人の方が希有なのだ。
フローレスは密かに「それなら、本に書いちゃえば良かった」と思っていた。
「それで、これで貴方の婚約破棄計画は順調なのですか?」
アダルベルトに急に微笑みを向けられ、フローレスはむせそうになる。
アダルベルトは第二王子が比べものにならないほど、上品で王族らしく、そして美形だ。
オルティス帝国の皇帝の血筋は、過去にエルフが居たと言われている。
その理由は、類稀なる緑属性の適性や緑色の髪や瞳もそうだが、何よりも美しかった。
オルティス帝国では、次代の皇帝は髪色と魔力量で決まるとされている。
皇族の血が必須条件だが、直系の長子とは決まっていないのだ。
今回は、今この国に来ている第二皇女が最有力候補だった。
「ある意味、婚約破棄は既に終わってますね。婚約者から婚約者候補へ格下げされているので」
フローレスは、冷たい人形のようだと称される笑顔を、顔に貼り付けた。
「でもこのままだと、決め手に欠けて、当初の予定通りフローレス様にしましょうってなりそうなのよね」
伯爵夫人の発言に、三人の視線が集まる。
「でも、第二王子の関心は、ルロローズにしかありませんよ?」
フローレスが言うが、伯爵夫人はゆるく首を振る。
「そんな理由では、第二王子の評判が下がるだけです。そもそも婚約者候補が二人居る事も、未だ発表されてませんでしょう?」
もう少しルロローズ様が優秀ならねぇと、伯爵夫人が溜め息と共に呟く。
「確かに、王子妃教育前半もまだ終わって無いのですよね……」
フローレスは天井を眺めた。
本当に天井を見ているわけでは無い。気持ち的には、遥か先の宇宙を見ていた。
ルロローズの王子妃教育は、他国の歴史と文化で頓挫していた。
王子妃としては、1番必要な知識である。
伯爵夫人はそれも含めて「フローレスが選ばれる」と言っていたのだった。
「ねぇ、ルロローズが治癒魔法が使えるようになるのと、王子妃教育を完璧に終わらすの、どちらが早いと思う?」
教授の所から帰って来たフローレスは、ドレスを着替えながら侍女へと質問した。
「究極の選択ですか?」
侍女の返しに「そこまで?」とフローレスが聞くと、「フローレスお嬢様を選んだ方が早いですからね」と先の先まで読まれていた。
「相手が第二王子じゃなかったら、子供でも作って貰うのにね」
純潔を尊ぶ貴族の結婚でも、無い事は無いが、これが王家となると話が違ってくる。
生まれてくる子供には、王位継承権が発生するからだ。
世論に後押しされるにしても、今のルロローズでは王子妃になるにはまだ弱い。
フローレスは最近多くなった溜め息を、無意識に吐いていた。
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