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32:公爵家の一員
しおりを挟む本日は、王宮でのパーティーへ行きます。
王族の方への挨拶と、前公爵様との初対面です。
前公爵様は隣国へ親友を助けに行っているとかで、まだお会いした事がありません。
隣国は数年前に王制が廃止され、民主主義国家になったはずですが……。
「主人とは王宮で待ち合わせなのよ。熊みたいな人だかけど中身は優しいからね」
お義母様が笑って言いますが、私は緊張して笑えませんでした。
呼び方は、やはり前公爵閣下でしょうか?
まだお若いのに爵位を譲られてしまった珍しい方なので、呼び方がよく判りません。
私が使用人なら「大旦那様」で済むのに。
「ナターシャ?変な事を考えているね。父の事は母と同じように呼んでやってくれ」
お義母様と同じように……ですね。
「かしこまりました」
では、お義父様とお呼びしなくては。
お義母様の時は緊張して間延びした呼び方になってしまいましたので、今回は失敗しないように頑張ります。
「そして私の事はオーギュ、と」
オーギュスタン様に瞳を見つめられながら、言われてしまいました。
「……オーギュ様」
前よりも親しく近しくなった気がします。
勝手に頬が熱くなってしまいました。
「今日はそれで我慢するよ。そのうち敬称も外して呼んで」
チュッと額にくちづけられました。
最近は、流れるように私にくちづけます。
今のように額だったり、頬だったり顳顬だったり、く、唇だったり。
他人の目のある所でも平気でしてくるので、とても恥ずかしいのです。
「はいはい、仲が良い事は良く解りました。行きますよ」
お義母様に言われてしまい、尚更顔が熱くなります。
今日の私のドレスは、淡い水色です。
殆ど白にしか見えない薄い布をヒラヒラと何枚も重ねる事によって、水色に見えるのです。
オーギュスタ……オーギュ様の髪色とよく似た色味です。
そして身に着けている宝石は全て青。
オーギュ様の瞳の色です。
対するオーギュ様は私のドレスに合わせて、白い服ですが、宝石は紫です。
タイ留めやカフス、ブローチなど全てが私の瞳と同じ紫なのです。
「わぁ~!見事な馬鹿……仲良し夫婦ですね!」
アンリ。今、馬鹿って言いましたよね?
「その位の方が、初めての夫婦揃ってのお披露目ですから良いのです」
サマンサが真面目な顔で言いますが、「馬鹿」を咎めないあたり、同じ事を思っているのですね。
「王家への挨拶が終わったら、私も側に居ますから安心してくださいね!」
マリリンが笑顔です。
そうなのです。
今日は伯爵家の長女のマリリンと、子爵夫人のサマンサも、パーティーに出席するのです。
アンリは男爵家長女ですが、下位貴族の子女は強制では無いので行かないそうです。
「私、結婚したら平民ですし」とは、本人の談。
出入りの商家の方と恋仲なのだとか。
サマンサの旦那様と、マリリンの婚約者とも初めて会います。
迎えに来るのかと思いきや、二人とも今日はお仕事でパーティーに出席しているのだと説明されました。
サマンサの旦那様は王宮料理人で、マリリンの婚約者は警備担当の近衛兵だと言うではありませんか。
「主人は王宮に貸しているだけで、本来はラスペード公爵家の料理人なのです。もうすぐ戻って来ますので、楽しみにしてくださいね」
サマンサは旦那様が王宮料理人ではなく、公爵家料理人だという事に誇りを持っているようです。
マリリンの婚約者は、身体強化したマリリンよりも強いそうです。
「私に勝てた人と結婚するって学生時代に言っていたら、今の婚約者が何度も挑んで来たのよ。卒業直前に負けてしまったわ」
一応惚気なのでしょうか?
思ったよりも、周りを凄い人に囲まれて居たようです。
これが公爵家というものなのでしょう。
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