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王立魔法学園~甘いは誰のため~(ざまぁはないよ!)
乙女ゲーム:甘い恋
しおりを挟むショコラは、木に凭せ掛けていた背を離し、すくっと立ち上がる。
膝に落とされたハンカチが地面に落ちた。
それを拾い上げ、持ち主へと返す。
「わたしもハンカチくらい持っています。
大丈夫です。ありがとう」
笑顔でそれを返すと、返された令嬢は眉間に深く皺を寄せながら受け取る。
それを見て、少しだけショコラの気が晴れた。
「何をしている」
明らかな怒気を含んだ声が聞こえてくる。
声の方向を一斉に見て、貴族の令嬢達は皆口元に扇を当てる。
現れたのは、マカディーアだった。
「ショコラ、大丈夫か?」
ショコラを庇うように、マカディーアが令嬢達とショコラの間に立つ。
そっと、ショコラはマカディーアのシャツを掴んだ。
「殿下、そのように一方的に決めつけるのはおやめください」
睨みつけるようにマカディーアとショコラを見ながら、シフォンティーヌが言う。
「決めつけるも何も、三人で一人を囲んでいただろう」
自分の服の腕の部分を掴む震える指を、マカディーアは優しく包む。
ショコラは、ここにいる誰よりも背が小さい。自分よりも大きな三人に威圧されれば、誰だって怖いだろう。
特にきつい面立ちのシフォンティーヌがいれば尚更だ。
「私達は、常識を教えていただけですわ」
シフォンティーヌの言葉に、マカディーアは鼻で笑う。
「常識、常識。お前の言う常識は、貴族の世界の常識か?
だがここは貴族社会ではない。学生が皆平等である学園だ」
マカディーアの台詞に、シフォンティーヌは黙りこむ。
「ショコラ、行くぞ」
三人の令嬢をそこに置き去りに、マカディーアはショコラを連れてその場を去った。
「ありがとうございました。マカディ様」
三人の姿が完全に見えなくなった所で、ショコラは笑顔を見せる。
「大切なショコラの為だ。何でもない」
マカディーアは、そっとショコラの腰に手を回す。
入学式で出会ってから少しずつ、二人は距離を縮めていた。
今では人気のない所では、甘い言葉を囁き合うほどに。
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