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王立魔法学園~甘いは誰のため~(ざまぁはないよ!)
乙女ゲーム:甘い少女
しおりを挟む「母ちゃん、あたい行きたくない」
既に半泣きの少女に、母ちゃんと呼ばれた女は微笑む。
「ほら、また言葉が戻ってるよ。これから貴族たらと一緒に過ごすんで?
せっかく色々教えて貰ったんだら、頑張ってきな」
それなりの美貌を持っていた女だが、平民、しかも下町育ちの為に言葉は荒い。
「はい。お母さま。わたし、頑張ります」
まだ瞳に涙を湛えながら、少女は健気に笑う。
「なんでアタシと父ちゃんの子なのに、魔力が高くなっちまったんだらねぇ」
自分は生まれて一度も袖を通した事のないような上質な服〈魔法学園の制服〉に身を包んだ我が子を見て、女は首を傾げた。
平民が強力な魔力を有していた場合、国からの全額補助で魔法学園に入園する。
制御できない魔法ほど危険な物はないからだ。
貴族は、生まれた時から魔力に囲まれている。
早い者では3歳から魔法について学んでいた。
しかし、平民の場合は15歳まで学ぶ機会が無い。
魔力暴走など事件を起こせば別だが、通常は15歳になる年の『魔力測定』まで自分の魔力量など知らないからだ。
勿論、少女も、15歳目前の魔力測定日まで、自分の魔力量を知らなかった。
魔力測定の日。
魔力量を表すメモリがグングンと上がっていき、平民の100倍…公爵家に匹敵する魔力量…を示して止まった。
そして怒涛のような1ヶ月が過ぎ、本日、魔法学園の入寮日となった。
少女の名前はショコラ。
貴族では無いので、自己紹介をするとしたら
「4番街のパン屋の娘のショコラです」
だろうか。
名前に似合った少し赤みがかったふわふわとした茶色の髪に、ヘーゼル色の瞳を持つふんわりとした容貌。
肌の色は素は白いのかもしれないが、適度に日焼けしていて健康的な色味だ。
目はクリクリと大きく、閉じている時はぷっくりとしている唇は、笑うと驚くほど大きく開く。
あははは、と、声を出して元気に笑うショコラは、パン屋の看板娘だった。
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