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第一王子殿下side
第97話:断罪後
しおりを挟む俺に、王家の血が通っていない?
意味がわからない。
俺は、王に成るべく生まれたのではないのか?
王家の「赤」はほとんど出なかったが、そんな事もあり得ると言われて育った。
フィオと結婚して、子供を作れば良かった……だと?
それは、俺も望んでいた事だったのに!
伯爵家で祖父と母に、なぜあんなに公爵家を……フィオを蔑ろにしたのか問い詰めた。
弱みを握られたら困るから、あくまでも優位に婚姻を進めたかったと。
俺がフィオに惚れて、実家や母親よりも公爵家に肩入れするようになると困るからと。
最初から無駄な足掻きだったみたいだがな。
俺の本当の父親は、誰だかわからなかったらしい。ただ、貴族なのは間違いない。
仮面舞踏会という名前の乱交パーティーに何度も何度も何度も何度も出席して、気付いたら妊娠していたと。
無理矢理、当時の王太子の側妃になったが、とても仲が良かった正妃との間には入れず、しかも正妃が子供を産むまではそういう行為自体をしないと言われたそうだ。
焦った伯爵家は料理人を買収し、王太子を薬で眠らせ既成事実を捏造した。
俺は月足らずで生まれた子にしたと。
娘が生まれた。
俺は、辺境の子爵家に養子になっていた。
おそらく本当の父親と思われる人物が、あの後名乗り出て来たからだ。
あの 断罪の場にいたらしく、俺の境遇と姿を見て、自分の子だと思ったと笑った顔は、確かに俺に似ていた。
妻に早くに先立たれた為、子供は居ない。仮面舞踏会に参加していた当時には、もう亡くなっていたそうだ。
今回、母との再婚も打診されたが、それはキッパリと断ったとなぜか得意げに言われた。
俺は何もできないと、子爵家に来てから思い知らされた。
学園は何を教えていたのかと、疑問が湧いた。
娘を産んだ平民女は、育てる気はないと伯爵家に娘を売った。
それでも母親は必要だろうと連絡してきたら会わせるつもりだが、今のところ何も言ってこない。
娘が5歳になり、伯爵家と子爵家のどちらを選ぶか聞いたら、俺と一緒に暮らしたいと言われて、泣いた。
初めて家族を得た。
娘と暮らして15年。貴族として生きる事を拒否していた娘が昨日、農場の跡取りの所へ嫁いで行った。恋愛結婚なので心配はしていない。
その後、子爵家当主が再婚した。老いらくの恋と本人は笑っていた。
俺より8歳下の新妻は妊娠している。
子爵家は俺が継いだ後、生まれてくる子が成人したら継ぐ事になる。
男でも女でも関係ない。
久しぶりに会った娘に、伯爵家からの伝言を告げる。実の母親から初めて、会いたいと連絡がきたそうだ。
「はぁ?今更何言ってんの?馬鹿じゃないのクソババァ。
金でも強請る気じゃないの?さっさと死ねば良いのに」
誰に似たんだろうな、この口の悪さは。
外にいる孫達には聞かせたくないセリフだな。
とにかく、伯爵家へ「二度と連絡をしてこないように伝えて欲しい」と返事をしておいた。
「ねぇ、父さん。子爵家引退したら、農場へおいでよ。肩身狭いでしょ?
敷地内に空いた家もあるよ?」
娘の言葉は嬉しいが、肩身の狭さは子爵家でも農場へ来ても変わらないだろう。
それに、あの女にそっくりな娘を毎日見て暮らすなんて、どんな拷問かと思った。
────────────────
気付いてますか?一度も自分が悪いと認めてないのですよ。
これにて、本当の完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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