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第一王子殿下side
第94話:幼少期
しおりを挟む「エルクエール公爵家のフォンティーヌ嬢です」
初めて会ったのは、多分3才の時だ。
母様から「王家と姻戚関係になりたい下賤の者です。舐められてはいけませんよ」と、言われていたので、俺は自分からは話しかけなかった。
他にも何人か会ったがフォンティーヌが1番可愛いと思った。
俺の婚約者候補は、最終的に3人に絞られていた。
エルクエール公爵家のフォンティーヌ。
カヌーレイ公爵家のサラシーア。
トールティー公爵家のカースティラ。
サラシーアはイライジャとも顔合わせをしていて、俺とは一切話をしないくせに、イライジャとは仲が良いようだ。
カースティラは、やたらと馴れ馴れしく話しかけてくるし、正直3人の中で1番ブスだ。
俺様に相応しいのは、フォンティーヌしかいないだろう。
俺様の婚約者に選んでやったのに、エルクエール家からは断りの返事が来た。
何でだ!?生意気だぞ!
俺様は王族なんだぞ。この国で1番偉い家なんだ。
そしたら母様から「貴族には、建前と言うものがあるので、すぐには了承しないものなのです」と言われた。
フォンティーヌが俺様に話しかけて来ないのも、俺様の気を惹きたいからだと。
王宮に来ても、本を読んでばかりいる。
しかも、凄く難しい本だ。
「自分が優秀だと見せつけて、貴方の婚約者に選ばれたいのよ」母様は言う。
そんな事しなくても婚約者に選んでやるのに。
俺様が話をしようと言ってやったのに、「本が読みたいからじたいします」とか言ってきた。
じたいって何だ?
とりあえず、本がなければ話すだろうと思い取り上げたら、腕がぶつかって倒れた。
ちょっと腕が当たっただけで大袈裟だ。
しかも、階段から落ちていった。
体の鍛え方が足りないんだ。
本ばかり読んでいるから、簡単に倒れるんだ。
「王宮から治癒師を派遣しなかったとは、何事だ!」
エルクエール家から『こうぎぶんしょ』とか言うのが届いたと、父上から呼び出された。
「突き落とした犯人はお前だと書いてあるが、本当か?」
突き落としていない。勝手に落ちたんだ。
「父上、違います!」
「……父?」
「陛下……違います」
睨まれた。
公私を分ける為だと、公式な場では陛下と呼ばなきゃ怒られる。
「突き落としたんじゃなくて、ちょっとぶつかっただけなのに勝手に落ちたんだ」
「大体、俺の婚約者候補なのに、俺に従わないのがおかしいんです。
王妃である母様もそう言ってました」
威圧ってのを初めて感じた。
「お前の母親は王妃ではない」
何を怒ってるんだ?
だって母様が「自分は王妃だ」と言っていた。
第一王子を生んだから、第二王子の母親よりエライんだと。
さっきから、隣にいる母様は何も言わない。
「間違った知識を王子に与えるのは止めるように」
父上の言葉に、母様は頭を下げた。
「エルクエール家に婚約を強要するのも、すぐに止めるように」
何を言っているんだ?
「赤がないのだから、せめて内面を磨けば良いものを……」
何だ、とても可哀想なものを見る目で見られた気がする。
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