93 / 113
ヒロインside
第93話:断罪後
しおりを挟む頭が真っ白になるって、本当にあるんだ。
マカ様が王子様じゃないんだって。
それに、何となくは気付いてたんだ。
マカ様は、別に私を好きじゃないんでしょ?
でも、私もマカ様が好きだったわけじゃないから全然良いんだけどさ。
綺麗な服とか買えて、誰も私に逆らわない立場、そんなものが嬉しかっただけ。
何もしなくても、なんでも出て来る環境。
「凄い」と褒めれば、それだけで「チョコアは素直だね」と言ってチヤホヤされた。
呆っとして過去を思い出してたら、いつの間にか音楽が流れている!?
何で私達を無視して、楽しそうにダンスなんてしてんのよ!
マカ様が手を踏まれた。
フィオとかいう女といつも一緒にいる伯爵家の女だ。
文句を言ったら、逆に怒られた。
え?伯爵家の中でも順番があるわけ?
今度は侯爵家の女!?
あの女、そんな偉い立場だったの?
まだ這いつくばってるマカ様を、カシィとアーモが立たせて連れて行った。
2人とも私を見もしない。
なんで無視すんのよ。
大体、カシィが婚約破棄されたのだって、自分に魅力がないからでしょ?
私、関係ないじゃん。
マカ様だって、婚約破棄されたのは魅力がないからじゃん。
そうだよ。
私、悪くなくない?
学園に行ったのだって、魔力が高いから学園で学ぶようにって強制されたんだよ。
学費は出すって言うから、一切お金かかんないと思ってたのに、日用品は自腹っておかしくない?
制服だって汚れても新しいのすぐにくれないしさ。
他の寮生は洗濯とか自分でやらないのに、私だけ自分でやれとかさ。
じじょがやってるって何よ、ソレ。
じゃあそのじじょに私の身の回りの世話もやらせなさいよ。
あぁ、思い出したらムカムカしてきた。
実家に帰って、両親にお腹の子は王子様の子じゃないって言ったら「じゃあ働け」と言われた。
下町では、妊婦だからとのんびりはしていられない。
お腹が大きくなってもできる事をした。
両親は何も言わず、何も聞いてこなかった。
寒い夜。女の子を産んだ。
「自分で育てるか?」と聞かれたので「無理」と即答した。
マカ様の実家に引き取られた。
「会いたければ、連絡を入れれば会える」と言われたが、別に興味ない。
学園も手続きすれば復学できるらしいが正直興味ない。
魔力が高いって言われても、雷じゃなんの役にも立たないって事だけは勉強してわかったよ。
数年後、大きな商店の三男の後妻に収まった。
私は22歳だったが、相手は56歳だ。
私の仕事は、家事でも育児でも、後継を産むことでも、夜伽でもなかった。
新しく開発された大型の魔道具に魔力を注ぐだけ。
主人には妾がおり、30歳と38歳の2人とも、美人でスタイルが良い。
いつも綺麗な服を着て、店で貴族など客の相手をしている。
お店は長男が経営しているらしく、その家族が仕切っている。
次男は才覚があり、自分で事業を起こして独立したそうだ。
兄弟仲はとても良く、手を取り合って店を盛り立てている……らしい。
私は独り、敷地内に建てられた別家で暮らしている。掃除や洗濯は、私の仕事中に使用人が済ませてくれる。
そして、日々の生活には困らない程度のお金を貰っている。
いや、実家にいるよりは余程贅沢な暮らしが出来ている。
綺麗な服を買えるし、美味しい物も食べに行ける。
年に2回は、宝石を買う位の贅沢はできる。
最初の2年位は楽しかった。
だが最近は外に食べに行くのが面倒になり、使用人に食事を届けさせている。
一度、一緒に食べて良いか聞いたら「奥様が使用人部屋で食事などありえません」と断られた。
もう何年、いや10年以上?誰かと食事を共にしていない。
仕事も独りで黙々と魔力充電をするだけで、会話どころか挨拶もしない。
マカ様の実家に「娘に会いたい」と連絡したら、遠くの領地に嫁に行ったと言われた。
そして娘からの伝言が『二度と連絡して来ないで』だった。
綺麗な服や宝石を買って、美味しい食事をして、身の回りの事を他の人がしてくれる。
私が望んだ生活を今しているはずなのに、なぜかとても辛くなるのはなぜだろう。
51
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね
との
恋愛
レトビア公爵家に養子に出されることになった貧乏伯爵家のセアラ。
「セアラを人身御供にするって事? おじ様、とうとう頭がおかしくなったの?」
「超現実主義者のお父様には関係ないのよ」
悲壮感いっぱいで辿り着いた公爵家の酷さに手も足も出なくて悩んでいたセアラに声をかけてきた人はもっと壮大な悩みを抱えていました。
(それって、一個人の問題どころか⋯⋯)
「これからは淑女らしく」ってお兄様と約束してたセアラは無事役割を全うできるの!?
「お兄様、わたくし計画変更しますわ。兎に角長生きできるよう経験を活かして闘いあるのみです!」
呪いなんて言いつつ全然怖くない貧乏セアラの健闘?成り上がり?
頑張ります。
「問題は⋯⋯お兄様は意外なところでポンコツになるからそこが一番の心配ですの」
ーーーーーー
タイトルちょっぴり変更しました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
さらに⋯⋯長編に変更しました。ストックが溜まりすぎたので、少しスピードアップして公開する予定です。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
体調不良で公開ストップしておりましたが、完結まで予約致しました。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
ご一読いただければ嬉しいです。
R15は念の為・・
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる