【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】

仲村 嘉高

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断罪後のお話 ※ざまぁ要素はもうありません

第90話:求婚

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 学園の卒業プロムナード。
 バカ……じゃなくて、マカルディーの廃嫡?除名?があったり、ライジ殿下の王太子決定発表があったり、ライジ殿下とサラの婚約発表があったり、色々あった。

 そしてもう一つ。
 リュオは龍王国の王太子でした。
 王は代々『龍王』の名を継ぐらしく、王になるまでは、適当な渾名あだなを名乗るんだってさ。
 私とミリフィールの「羊羹」「豆大福」発言でアレ?となったので本名の「龍王りゅうおう」ではなく通り名あだなの「リュオ」と名乗っていたとの事。
 自国と関係があるのかと、疑っていたらしい。でも、本人の前でポロリとも洩らしちゃうレベルの密通者なら、恐るるに足らず……だと思う。



「フィオ!龍王国から正式に婚姻の申し込みが来たんだが!」
 父よ、年頃の娘の部屋に入る時はノックくらいしなさい。
「龍王国なんて遠いから、やめなさい」
 兄よ、なんじゃそりゃ。
「龍王国だと精霊の種類が違うから、姿が見られないじゃない」
 義姉よ、隠し撮りは犯罪だ。

「しょうがないじゃないですか。
 惚れてたって言われてしまったら、お受けするしかないでしょう?」
 なんせ、前世からですからね。

「どこかに行くのか?」
 私の服装を見た父が聞いてくる。
 今気付いたのか。遅いわ。
「王宮へ呼ばれてますので、行って参ります」
 ちょ、3人共、眉間の皺が凄いわよ。
「リュオ様に呼ばれて?」
 ん~そうなるのかな?
 でも、一応筆頭はライジ殿下だ。
「ライジ殿下とサラ、リュオ様、シュヴァルツェ様、ミリフィール、ジェラール、ルーベン様、ビゼタール先生、これだけの人数が集まりますわ。
 お別れ会とでも言いますか……次に集まれるのは、誰かの結婚式でしょうから」
 ちょっと寂しそうな顔をしてみせる。
 そうしたら、3人は渋々でもOKするからね。



「待ってたよ、フィオ!」
 リュオに高い高いをするように持ち上げられ、クルクルと回られる。
 酔うからやめろ。
「あ~前世から変わらない、その見下す感じの表情、堪らない」
 この変態に変貌した残念なリュオには、理由がある。
 リュオの前世は、なんと妹の同級生だった。
 公式本の依頼をしてきたのが彼だったのだ。
 大筋とキャラ設定を彼が、他にストーリーを作る人、プログラムを作る人などがいたらしい。

「人に媚びない、その感じが堪らない」
 リュオが惚れてたのは、驚くなかれ、前世のだ。
『甘王公式本』のデータがどこかに消えた時、誰に依頼したのか、どこの会社に依頼したのか、契約書もなければ、記憶も消えた。
 依頼した事実だけが残っていたとか。
 70歳まで生き、一生独身で過ごし、少し早いが天寿を全うした……はずが、何故か目覚めてしまい、気付いたらこの世界にいたらしい。
 学園に留学する事が決まった時に記憶が戻ったとか。
 龍王国は、転移者や転生者が多く、誰も隠さない不思議な国だから、あんなにも日本的なんだとか。良いな~。

 卒業プロムナードの日、テーブルに置いた『甘王公式本』に触れた時に、妹と私についての消えていた記憶も戻ったとか。
 突然膝をつき「お姉さん、結婚してください」と、求婚された。
 その瞬間に『甘王公式本』が光って、全ページ読めるようになったのには驚いた。

 奥付が「編集者:妹」だけなのはどうかと思ったけどね。

「フィオがだと気付いたのは、感覚としか言いようがないな。
 あ、ここにいたんだ、とそう思ったんだ」
 申し訳ないが、私には前世の彼の記憶はない。
 挨拶くらいはしてるかもしれないが、覚えていない。
「誤解しないで、フィオ。
 フィオがお姉さんだったのは、偶然というか必然かもしれないけど、お姉さんだと、気付く前からフィオには惹かれていた。
 例えお姉さんじゃなかったとしても、俺はフィオに結婚を申し込んでいたよ」
 格好良いのか、支離滅裂なのか、微妙な台詞。
 でも、私の心には響いた。

 よし、龍王国で日本食を堪能しよう。


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