上 下
90 / 113
断罪後のお話 ※ざまぁ要素はもうありません

第90話:求婚

しおりを挟む
 


 学園の卒業プロムナード。
 バカ……じゃなくて、マカルディーの廃嫡?除名?があったり、ライジ殿下の王太子決定発表があったり、ライジ殿下とサラの婚約発表があったり、色々あった。

 そしてもう一つ。
 リュオは龍王国の王太子でした。
 王は代々『龍王』の名を継ぐらしく、王になるまでは、適当な渾名あだなを名乗るんだってさ。
 私とミリフィールの「羊羹」「豆大福」発言でアレ?となったので本名の「龍王りゅうおう」ではなく通り名あだなの「リュオ」と名乗っていたとの事。
 自国と関係があるのかと、疑っていたらしい。でも、本人の前でポロリとも洩らしちゃうレベルの密通者なら、恐るるに足らず……だと思う。



「フィオ!龍王国から正式に婚姻の申し込みが来たんだが!」
 父よ、年頃の娘の部屋に入る時はノックくらいしなさい。
「龍王国なんて遠いから、やめなさい」
 兄よ、なんじゃそりゃ。
「龍王国だと精霊の種類が違うから、姿が見られないじゃない」
 義姉よ、隠し撮りは犯罪だ。

「しょうがないじゃないですか。
 惚れてたって言われてしまったら、お受けするしかないでしょう?」
 なんせ、前世からですからね。

「どこかに行くのか?」
 私の服装を見た父が聞いてくる。
 今気付いたのか。遅いわ。
「王宮へ呼ばれてますので、行って参ります」
 ちょ、3人共、眉間の皺が凄いわよ。
「リュオ様に呼ばれて?」
 ん~そうなるのかな?
 でも、一応筆頭はライジ殿下だ。
「ライジ殿下とサラ、リュオ様、シュヴァルツェ様、ミリフィール、ジェラール、ルーベン様、ビゼタール先生、これだけの人数が集まりますわ。
 お別れ会とでも言いますか……次に集まれるのは、誰かの結婚式でしょうから」
 ちょっと寂しそうな顔をしてみせる。
 そうしたら、3人は渋々でもOKするからね。



「待ってたよ、フィオ!」
 リュオに高い高いをするように持ち上げられ、クルクルと回られる。
 酔うからやめろ。
「あ~前世から変わらない、その見下す感じの表情、堪らない」
 この変態に変貌した残念なリュオには、理由がある。
 リュオの前世は、なんと妹の同級生だった。
 公式本の依頼をしてきたのが彼だったのだ。
 大筋とキャラ設定を彼が、他にストーリーを作る人、プログラムを作る人などがいたらしい。

「人に媚びない、その感じが堪らない」
 リュオが惚れてたのは、驚くなかれ、前世のだ。
『甘王公式本』のデータがどこかに消えた時、誰に依頼したのか、どこの会社に依頼したのか、契約書もなければ、記憶も消えた。
 依頼した事実だけが残っていたとか。
 70歳まで生き、一生独身で過ごし、少し早いが天寿を全うした……はずが、何故か目覚めてしまい、気付いたらこの世界にいたらしい。
 学園に留学する事が決まった時に記憶が戻ったとか。
 龍王国は、転移者や転生者が多く、誰も隠さない不思議な国だから、あんなにも日本的なんだとか。良いな~。

 卒業プロムナードの日、テーブルに置いた『甘王公式本』に触れた時に、妹と私についての消えていた記憶も戻ったとか。
 突然膝をつき「お姉さん、結婚してください」と、求婚された。
 その瞬間に『甘王公式本』が光って、全ページ読めるようになったのには驚いた。

 奥付が「編集者:妹」だけなのはどうかと思ったけどね。

「フィオがだと気付いたのは、感覚としか言いようがないな。
 あ、ここにいたんだ、とそう思ったんだ」
 申し訳ないが、私には前世の彼の記憶はない。
 挨拶くらいはしてるかもしれないが、覚えていない。
「誤解しないで、フィオ。
 フィオがお姉さんだったのは、偶然というか必然かもしれないけど、お姉さんだと、気付く前からフィオには惹かれていた。
 例えお姉さんじゃなかったとしても、俺はフィオに結婚を申し込んでいたよ」
 格好良いのか、支離滅裂なのか、微妙な台詞。
 でも、私の心には響いた。

 よし、龍王国で日本食を堪能しよう。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも
恋愛
病弱な令嬢アリスは伯爵家の子息カルロスと婚約していた。 しかし、アリスが病弱な事を理由ににカルロスに婚約破棄され、義妹アリシアに寝取られてしまう。 途方に暮れていたアリスを救ったのは幼馴染である公爵様だった。二人は婚約する事に。 一方その頃、カルロスは義妹アリシアの我儘っぷりに辟易するようになっていた。 頭を抱えるカルロスはアリスの方がマシだったと嘆き、復縁を迫るが……。 これは病弱な令嬢アリスが幼馴染の公爵様と婚約し、幸せになるお話です。

虐げられモブ令嬢ですが、義弟は死なせません!

重田いの
恋愛
侯爵令嬢リュシヴィエールはここが乙女ゲームの世界だと思い出した! ――と思ったら母が父ではない男性との間に産んだという赤ん坊を連れて帰ってきた。彼こそが攻略対象の一人、エクトルで、リュシヴィエールは義弟をいじめて最後には返り討ちにあうモブだった。 最悪の死を回避するため、リュシヴィエールはエクトルをかわいがることを誓うが… ちょっと毛色の違う前世を思い出した系令嬢です。 ※火傷描写があります ※完結しました!ご覧いただきありがとうございます!

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

【完結】私は、幸せです。

仲村 嘉高
恋愛
婚約破棄された令嬢が、特に自分では何もせず幸せになる話。 婚約破棄した元婚約者と、それを画策した『自称親友』令嬢が勝手に不幸になって行く。 そんなお話 獣人などの亜人や、番などがある世界観です。 ※元婚約者の自分勝手な後悔が、胸クソ案件かもしれません。 R15は保険です。 ※「運命の番だと言われました」と同じ世界観で、その数百年後の設定です。 別作品としても読めるように書いたつもりです。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

処理中です...