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さぁ、アレの本番です。
第87話:DNA
しおりを挟む「う、嘘だ」
バカ……可哀想だから名前で呼んであげましょうか。
マカルディーが床に膝を着けました。
そう。母である側妃と同じように頽れたのです。
崩れ落ちるマカルディーを支えもせず、チョコアはすぐに腕を離しました。
マカルディー以上に呆然としています。
そりゃそうよね。王族の子を妊娠したと喜んでいたら、実は伯爵家の子だものね。
しかも、彼は婚外子……いわゆる私生児ですもの。
伯爵家には立派な後継ぎに嫡子が既にいるので、成人している今は確実に伯爵家を出されるでしょう。
「フィオ、お前は……俺が好きなんだよな?
お、俺に妬かせたいからイライジャと仲良くしたりしてたんだろ?」
そんな縋るような目で見られてもね。
「いいえ、まったく」
好きでもないし、妬かせようと思った事もない。
四つん這いで惨めに見上げてくる姿には、ちょっと溜飲が下がりましたが。
「俺……俺は、ずっとお前……フィオがす……」
「マカルディー様。何度も言いましたが、貴方に愛称で呼ぶ事を許しておりません。
そして、私は公爵家ですが今の貴方は伯爵家です。
気軽に声を掛けないでくださいませ」
キッパリと言う。
そう。学園を卒業してしまった今では、彼は私に気軽に声を掛けて良い立場ではない。
ヤバイ。悪役令嬢らしく高笑いでもした方が良いかしら?とか、ちょっとネタに走りそうな自分がいる。
サラが舞台の上から『やるなよ?』という目で私を見ている。
何でバレた。
しかしサラも結婚しちゃうのか~。
あの時言った「それよりも問題有りの方がここに1人いらっしゃるわよね」は、こうなる事がわかってたんだろうな。
多分腹黒殿…王太子殿下が私に構い始めた時には、この計画は進んでいたんだろう。
「俺は……何の為に平民になんか……かまっていたと……」
知らんがな。馬鹿だからでしょ?
「お前が、俺がチョコアに構うと妬いて嫌そうな顔をするから!!嫉妬でチョコアを虐めてると言うから……だから……」
チョコアの嘘を信じてたんだ。
ちなみに嫌な顔をしてたのは、お前があまりにも馬鹿な行動をしていたせいだからな。
「イライジャを使って俺に嫉妬させるから……俺も意地になって……」
腹黒王太子殿下の罠に嵌ったと。
マジで馬鹿だな。
うん。王族の血は入ってないね。
だって王族はDNA単位で腹黒だよ。
陛下も、父も、兄も、義姉も、サラもね。
「マカルディー様。何度も説明しないと理解できないようですね。
貴方は既に伯爵家の人間です。私をお前呼ばわりできる立場ではありません。
イライジャ王太子殿下を呼び捨てにするなど、以ての外です」
そして、勿論、私も腹黒です。
あぁ、素晴らしい。マカルディーの絶望の表情です。
これを見る為に、私は12年我慢したんですね。
まぁ、その前に婚約解消できれば、もっと良かったんだけどな!
理由は何であれ、18歳で瑕物婚約破棄令嬢だよ。
結婚出来ないかもね~。
「皆の者、つまらない事で折角の祝いの場を台無しにして申し訳なかった。
さぁ、卒業プロムナードを始めよう」
ライジ王太子殿下……長いな。
今まで通りで良いか。
ライジ殿下の言葉で、中断していた卒業プロムナードが再開した。
つか、陛下が挨拶しただけだったよね。
しかし、血縁関係は無いとはいえ、一応兄弟として18年育った兄が崩れ落ちて膝を着いているのに、無視ですか。
さすが、未来の王様です。
それにしても、元側妃も馬鹿だったんですね。
何でマカルディーを陛下の子として誤魔化せると思ったのでしょう?
王家に連なる家系は、3歳になると神殿で洗礼を受け、その血脈の証明を受けるのに。
前世でいうところのDNA検査です。
大臣は元々知ってたから、あんな変な契約書を王家に作らせたんだろうなぁ。
いや、側妃のコネで大臣になってから知ったのか?
とにかく、王家としても傷物のお下がりを騙されて側妃に迎え入れたって外聞が悪いもんね。
もしかしたら、マカルディーが優秀かもしれないって希望的観測もあったんだろう。
大外れだったけどね!
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