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さぁ、アレの本番です。
第85話:敬称
しおりを挟むあぁ、なんて清々しい気分でしょう。
幼少の頃から王妃教育を受けさせられ、更に婚約者のバカ殿下からの理不尽な態度。
それも今日で終わりです。
なんて久しぶりの心からの笑顔でしょう。
「マカルディー様、チョコア様、ご懐妊おめでとうございます」
心からのお祝いを述べた。
後ろに下がっていた兄夫婦が私の両脇を固める。
先程離れたのは、バカ殿下が近付く隙を作る為だったのか!
「マカルディー様、平民との間に世継ぎを作るとは、中々思い切った事をなさいましたね」
兄もとても晴れやかな笑顔です。
「継ぐのはパン屋ですか?」
あ、こら、義姉。
それはまだこれからジックリと追い詰めてから……ね。
「ティシエール王国、国王陛下、王妃陛下、ご入場です」
私達が入場したのと反対側にある舞台の脇から陛下と正妃様が入場して来る。
舞台の真ん中で立ち止まり、会場の方へと向く。
いつも我が物顔で一緒にいる側妃…マカルディーの母親…が今日はいない。
馬鹿息子の晴れ舞台のはずなのに珍しいな?と思ったら、舞台の下に父親である大臣と一緒にいた。
凄い目で舞台上を睨んでいる。
あれ?側妃のドレス、私達のデビュタントの時の物をリメイクしてる?
国庫からお金が出なかったんだね。
「王立魔法学園の卒業生諸君、おめでとう。
学園で学んだ事は、これからの人生に良くも悪くも影響する事だろう。
全ては自分の行いが基であると心に刻み、驕らず、謙虚に、誠実に、これからの人生を歩んで欲しい」
陛下がお祝いにしては、随分と堅い挨拶をする。
普通祝いの席なら『君達の未来は輝いている』くらい言いそうなのに。
「若者達の未来を祝して……」
天井からキラキラと光と花が降ってくる。
花は本物ではなく、ホログラムのような物で実体はない。
陛下も光魔法を持ってるんだね。
光と花を見上げていると、舞台上に動きがあった。
ライジ殿下とサラが陛下と正妃の間に立っている。
言わなくてもわかります。
いえ、すみません。嘘です。
私の入場が遅くなった理由です。
ライジ殿下に呼ばれた私は、黒い笑顔の2人に説明されました。
「多分、私達ほど国の為になる相棒はいないと思う」
ライジ殿下?そこは嘘でもお似合いの~とかさ。
「政略結婚ではないのよ?
お互い、これ以上ないくらい相手を信頼しているのだから」
サラちゃん?そこは嘘でも幸せそうに微笑んで?
何、その何か企んでる黒い笑み。
そんな控え室でのやりとりなど無かったように、爽やかな笑顔のライジ殿下と、嬉しそうにはにかむサラ。
うん。本当にお似合いだわ、あんた達。
「今日の卒業をもって、ここにいるイライジャ・フォン・ティシエールを王太子とし、更にサラシーア・カヌーレイをその婚約者とする」
陛下の凛とした声が王宮の、卒業プロムナード会場に響き渡った。
「ち、父上!王太子は俺ではないのですか!?」
予想通り、バカが異を唱える。
「そうよ!後継ができたら王太子になれるんでしょ!」
おい、平民。何で普通に陛下に話しかけてるんだ。
それで王太子妃になろうとか、片腹痛いわ。
「母上!母上も言ってましたよね?
子供を作る事が王太子になる条件だと!」
側妃が射殺しそうな視線でチョコアを睨む。
バカの質問に答えたのは、祖父に当たる大臣だった。
「そんな汚らわしい平民と子供を作って、後継ぎにできるはずがないだろう。
お前が王太子になるには、王家の血を継いでいるエルクエール公爵家のフォンティーヌ嬢との間に子供を作らなければ駄目だったんだ!
この馬鹿者が!!」
バカの顔から血の気が失せる。
「で、でも、フィオと結婚して、こ、これから作れば……」
腕に絡まっていたチョコアの腕を振り払い、私の方へと身体を向けるバカ。
「お断りいたしますわ、マカルディー様」
まだ気付いてないの?
私達が貴方を呼ぶ時の敬称が変わっている事に。
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