【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】

仲村 嘉高

文字の大きさ
上 下
80 / 113
乙女ゲーム本編突入です。

第80話:嫉妬

しおりを挟む
 


「何で無視するのですか!」
 完全に蚊帳かやの外だったチョコアが叫ぶ。
 この人は大声でなければ話せないのだろうか?
 しかし、どんな心境の変化だ?
 言葉が少し丁寧になったぞ。
 サラがチラリと見て、無視する。
 そりゃそうだ。
 地位的にも、関係的にも、サラから見れば路傍ろぼうの石だ。

「マカルディー殿下。これからもご一緒に過ごされるつもりなら、貴族のルールを教えて差し上げてください」
『甘王公式本』は鳴らないけど、間違いなく手はつけたでしょう?
 側妃は無理でも妾にはできる……かなぁ?
 どうだろう。
 何、眉間に皺寄せてんのよ、バカ殿下。
 平民チョコアのこんな態度が許されるのは、学園の中だけだからね。

「目上の者に対しての挨拶くらいは覚えてくださいね」
 今度は平民チョコアに対して話し掛ける。
 ニッコリと笑顔で。
「え?マカ様の恋人なんだから、私の方が上でしょ?」
 はぁ?馬鹿なの?馬鹿でしょ。馬鹿だったね。
「何を根拠に言っているのか不思議ですが、公爵家である私の方が立場は上ですわね」
 敢えて言わないが、私は婚約者だからどう頑張ってもチョコアが私より上に行く事はない。

「それでは、私達はこれで」
 王族に対する挨拶にしてはおざなりな気もするが、まぁ良いや。
 私の肩を抱きながら、チョコアの横を通り過ぎる時にフンッと胸を張るサラ。
 バカ殿下の視線もサラの爆乳を見てるよ。
 羨ましいだろう。へへ~ん。
 いろんな意味で負けたチョコアは、凄い目で私達を睨んでいた。


「あんな愚民をぶら下げて、嫉妬してもらえるとでも思ってるのかしら?」
 サラが心底呆れた声を出す。
「嫉妬?誰が?」
 いや、マジで。
 バカと馬鹿がくっついたからって、誰が嫉妬するの?
 私は、サラの爆乳になら嫉妬するけどね。
 義姉のがデカイけど、やはり同い年のサラに嫉妬してしまう。

「フィオの会話の相手は胸なの?」
 あまりにもサラの胸を見ていたからか、向かいから歩いて来たシュヴァルツェに笑われた。
 シュヴァルツェの横にいるリュオも顔を背けて肩を震わせている。
 そんなこんなで、嫉妬の話は有耶無耶になってしまった。
 あ、やはり歩いた先にライジ殿下はいなかったよ。



 幸せなはずの昼食の時間が、イラッとする時間に変化した。
 なぜなら、チョコアが食堂の貴族スペースへの入室を再開したからだ。
 勿論平民チョコアだけでは入れないので、バカ殿下が一緒である。
 はい、あ~ん……なんてやってるよ。
 馬鹿か!?
 あ、ミリフィールとルーベンの事ではありません。
 この2人は正式な婚約者だし、見ていて微笑ましいから良いのだ。
 ミリフィール達は2人で幸せそうにしているが、バカ殿下とチョコアは、一口食べる度にこちらをチラチラ確認するんだ。
 根本こんぽんが違う。
 他人に見せる為にイチャイチャするって、楽しいのか?
 ホント馬鹿だな。

 そして罰ゲーム再開。
 いや、実際には罰ゲームではないんだが、私の心情的に罰ゲーム。
「今日のフィオのメニューはチキンソテーなんだね」
 ニッコリ。腹黒殿下の爽やかな笑顔。
 私が一口大に切ると、当たり前のように口を開ける。
 もう抵抗する気もなくなった。
「はい、どうぞ」
 ライジ殿下の口元へ持っていくと、それをパクンと食べる。雛鳥か。
「うん。美味しいな」
 いつも、ライジ殿下が嚥下すると、反対側から呼ばれる。
 そしてやはり当たり前のように目の前にある食物。
「フィオ」
 名前を呼ばれたので、溜息をグッと飲み込んで振り返り、口を開けた。
 酢豚のようなそれは、とても美味しかった。

 さすがにこんな私に同情したのか、サラもライジ殿下に『あ~ん』をするようになった。
 ライジ殿下からの『あ~ん』がないのがせめてもの救いなのか?
 それにしても、食事中ずっとバカ殿下に見られているのが心底鬱陶しい。
 目の前の恋人チョコアに集中しなさいよ。


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...