79 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第79話:負の感情
しおりを挟む何か、私の意思とは関係なくどんどんイベントが進んでいっている気がする。
しかし、まだ『甘王公式本』の例の音がしない。
1:ヒロイン池ポチャる。
2:攻略対象者、今回はバカ殿下がヒロインを助ける
今、ここだね。
3:攻略対象者とヒロインの既成事実
ここまでいかないと駄目って事か!?
うわぁ、あの音がなったら、チョコアとバカ殿下がいたしたって事~?
それ、要らない……つか、どうでも良いし、知りたくもない情報だわ。
多分、自分が思ってるよりも嫌悪を露わにした表情をしていたのだろう。
「マカルディーとアレが2人きりになるのは嫌なのか?」
ライジ殿下が見当違いな事を聞いてきた。
「全っ然、大丈夫ですわ」
あ、全力で否定しちゃった。
2人きりだろうが、エロい事しようが、もう何でもやってくれって感じなんだけど、それを通知されるのが嫌なんだよね~。
だって想像してみ?
キラキラではあるけれど、滲み出る馬鹿さが隠せないバカ殿下と、イマイチ清潔感のない頑丈女だよ?
彼女の場合、平民だとか関係なくて、本人の資質だよね。
なんて色々考えていたら、サライさんが帰って来た。
早いな。
ライジ殿下に報告をするらしく、一礼した後、腰を屈めて顔を寄せる。
「浴槽に湯を張り、2人分のバスタオルとバスローブをご用意してきました」
サライさん?声デカくないっすか?
「アレを助けたのは、誰だ?」
ライジ殿下……侍従に質問する為にでも名前呼ぶのは嫌なのかい?
しかし、さすがは王子の侍従さん。わかっている。
「発見したのはビゼタール様ですが、自力で這い上がったようです」
たくましいな、チョコア。
「ご自身で制服を脱ぐのは厳しそうなので、うちの侍女の手が空いたら向かうように手配いたしました」
おや?含みのある言い方デスネ。
「そうか、ご苦労」
うわぁ、腹黒殿下らしい笑顔いただきました。
結局、この日は午後の授業が始まっても、全ての授業が終わっても、日付が変わっても、『甘王公式本』が鳴る事はなかった。
ヒソヒソ、コソコソ、サワサワ、学園内の空気が落ち着かない。
ウキウキワクワクの好意的な雰囲気ではなく、どちらかと言うと負の感情が蔓延している。
そして、とても残念な事に、私が通るとそのコソコソ話がピタリと止まってしまう。
明らかに私も関係している噂話だ。
あ、原因が歩いてる。
廊下……と言うには広すぎる通路の向こうから、仲良さげなカップルがこちらに歩いてくる。
「あら、おはよう」
バカ殿下の腕に身体を寄せながら腕を組んで歩いていたチョコアが挨拶をしてくる。挨拶か?
「マカルディー殿下、おはようございます」
敢えてチョコアは無視をして挨拶をする。
前からベタベタしてたけど、前とは明らかに違う雰囲気。うん。完全なバカップル。
皆もそれを感じているから、このヒソヒソ話状態なのだろう。
「マカルディー殿下、おはようございます」
私の隣にいたサラも同じようにバカ殿下にだけ挨拶をする。
バカ殿下の腕にぶら下がる頑丈女を見て、隣のメロンを見る。
抱きつかれるなら、絶対こっちが良いなぁ。
声も出さず横柄に頷くバカ殿下をチラリと見て、サラがメロンを押し付けるように私の肩に腕を回す。フフフ、役得だね。
「フィオ、あちらにライジ殿下がいらしたわよ」
と、優雅に私を誘導する。
多分、行った先にライジ殿下はいないだろう。単なるバカ殿下への嫌がらせだ。
なぜかサラとバカ殿下の間に火花が散ったように見えた。
48
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる