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乙女ゲーム本編突入です。
第63話:ヒロインとは
しおりを挟むそういえば、突拍子もなくチョコアが
『好きな人と好きなだけ踊る。それの何がいけないの?マカ様だって、とても喜んでたわ。』
とか言ってたっけ。
チョコアの奇行はいつもの事だから気にしなかったけど、これも『世界の強制力』だったのか?
そして私の台詞。
『その様な世迷言は、2人きりの時に好きなだけおっしゃると良いわ。』
これは、遠回しな『私は文句言ってねーし、嘘言ってんじゃねーよ』だったんだけど、『甘王公式本』の中では、嫉妬ゆえの台詞なんだね。
同じ台詞なのに、違う意味を持つ……怖ぁ。
「ダンスの事を言われた時に『好きなだけ踊れば?』とか言えば良かったのかな?」
思わず呟くと、ミリフィールが首を傾げる。
「実はあの時、バカ殿下が凄い顔でサプリの事を見てたから、下手な事言ったらもっと大騒ぎになってたかもね」
あれか?喜んでたってところか?
あれだけ足踏まれたりしてたのに喜んじゃったら、危ない趣味の人になっちゃうもんね。
「で、この後、フィオはヒロインを池に突き落とすわけね?」
サラが笑う。
「気持ち的には突き落としたいけど、そもそも池が無いしね」
う~ん。突き落としても、自力で這い上がって来そうだけどね。
「そういえばゲームの中でさ、突き落とした犯人が悪役令嬢とは確定してないんだよね。
現場に扇の羽が落ちてたってだけで」
え?犯人だって確定してないのに、断罪して婚約破棄しちゃうの?
「言いたい事はわかるわよ。実は、婚約破棄の本当の理由は、ヒロインとヤッちゃったから……じゃないのかな?多分」
はい?
乙女ゲームって、そんな描写もあるの?
「言っとくけど、エロゲじゃないから、直接的な映像は無いわよ。霞がかった淡いピンク色の画面に花が飛んで、ベッドに押し倒してるところで場面転換よ」
だよね~。ははは。
「えろげって何?」
おっと、予想外のところにサラが引っかかりましたよ。
この後、ミリフィールと2人でエロゲとは……と、切々と説明しましたとも。
何の為に?と聞かれて「おかず?」と冗談で答えても通じなかった時はどうしようかと思いました。
えぇ。おかずの意味も説明しましたよ。
ジェラールがいなくて良かった。
また説教喰らうところでした。
「話を『甘王』に戻すけど、ゲームのヒロインは、本当に虐められたり文句言われたりしてたんだよね?」
ミリフィールに問い掛ける。
「呼び出されて文句言われたり、すれ違いざまに嫌味言われたりしたわね。物を捨てられる、壊される、隠されるもあったわ。
制服を汚されるとか、上から水をかけられるとかもあったかしら?そんな環境で頑張る健気なヒロインって感じだったわね。
それでも、間違っても自分から洋服を強請る事はなかったわ」
制服もドレスも強請ってたね、この世界のヒロインは。
しかし、乙女ゲームの割には妙に陰湿なイジメだな~。
私、そこまでゲームが進んでたら、画面に向かって物投げてた自信あるわ。
あぁ、そうか。
基本はシンデレラだから、理不尽なイジメを受けるのか。
ヒロインとは、健気に耐える生き物なのだ。
じゃあ、残念女じゃダメじゃん、ヒロイン役。
アイツ、何も我慢しないよね。
健気でもないし、努力もしないし。
まぁ、手に入る王子様がバカ殿下だしな。
ある意味バランス取れてるのかもしれん。
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