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乙女ゲーム本編突入です。
第61話:園遊会6
しおりを挟む「イライジャ、これもお前の画策か?」
さっきまで怒鳴りまくっていたバカ殿下が、ライジ殿下に静かに問いかける。
「何の事を言っている?」
静かに答えるライジ殿下。
空気が圧縮されたようで、呼吸がしにくい。
さすがのチョコアも、いつもの傍若無人ぶりを発揮していない。
まぁコイツは、腹黒殿下が天敵だからな。
「マカルディー、帰りなさい」
おぉっとぉ!遂に陛下の登場です。
「何で俺が……」
「早く、パートナーを連れて帰りなさい」
有無を言わせぬ陛下の態度に、さすがのバカ殿下も諦めたようです。
大きく溜息を吐いて出口へ向かい……?
何で私の腕を掴む!
「お離しくださいませ、マカルディー殿下」
腕を振り払おうとするが、曲がりなりにも王子様。
日々の鍛錬はしているので、私如きの力で振り払えるはずがない。
「うるさい」
引き摺られるように出口へ連れて行かれる。
ふざけんなよ、クソ王子!
これじゃお前と私が騒ぎを起こしたみたいじゃないか!
「離してもらおうか。彼女は俺のパートナーだ」
リュオが、掴まれていない方の私の腕を掴む。
「フィオは俺の婚約者だ」
バカ殿下がリュオを睨む。
おい、マジでやめろ。
私が原因でこの馬鹿騒ぎが起こったみたいに見える。
本当の原因の罪を私に着せるつもりか?
マジでクソだな、バカ殿下。
ほら、お前等が争った理由を知らないギャラリーが私が騒ぎの原因みたいな誤解をし始めただろうが!
自分の女を庇う為に、婚約者を犠牲にするのか!
「な、何で私を置いて行くの!?」
チョコアが空いていた方のバカ殿下の腕に自分の腕を絡ませる。
何だこの構図。
あ、何かチョコアが笑みを浮かべた。
「そんなに私がマカ様からドレスを贈られた事が気に食わないんですか!?」
一際大きな声。
このやろう。騒ぎの原因をすり替える作戦か!
先程までのバカ殿下とリュオの静かな怒りの低い声の、何倍も通る甲高いチョコアの声。
リュオとチョコアの諍いを見ていた時よりも遥かに多いギャラリー。
「ダンスだってそうよ。好きな人と好きなだけ踊る。それの何がいけないの?
マカ様だって、とても喜んでたわ」
今にも泣きそうです、て感じで目に涙を溜めながら声を震わせ、会場内に響く音量で訴える。
肺活量スゲェな。
謂れの無い罵倒だが、何も言い返さないとそれが真実になってしまう。
「その様な世迷言は、2人きりの時に好きなだけおっしゃると良いわ」
嘘言ってんじゃねえよ、を貴族らしく遠回しに言う。
自分の女と婚約者が言い争ってるのに、まだ手を離さないバカ殿下も、かなりな強心臓だな。
**ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<設定ページ一部閲覧可能になりました>
空気を読まないアレが、頭の中に響きました。
イベント?これが?
あ、このイベントを起こす為に本来の学園行事ではないこのパーティーが催された?
これがミリフィールの言う『世界の強制力』なわけね。
どれがイベント?
バカ殿下がチョコアの罪を私に着せようとした事?
バカ殿下が私をパーティーの途中で退場させようとしている事?
チョコアと私が言い争っている事?
思わずミリフィールを探してキョロキョロとしてしまう。
リュオとバカ殿下の件は、多分関係ない。
リュオは本来、ゲームにいない登場人物だから。
そんな事を考えていたら、思わず抵抗する力が緩んでしまったようだ。
バカ殿下に強く腕を引かれて、体勢が大きく崩れてしまう。
バカ殿下に倒れ込むことは辛うじて耐えたが、引き止めてくれていたリュオの手が離れてしまう。
たたらを踏んだ私を、逆腕にヒロインをぶら下げたままのバカ殿下が連れて行く。
え、何、この屈辱的な構図。
遠くから見たら、仲良く帰ろうとしているバカ殿下と平民を、悪役令嬢が引き止めようとしてるように見えない?
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