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乙女ゲーム本編突入です。
第60話:園遊会5
しおりを挟むフロアでカーシューが何かを話している。
言われているチョコアはどんどん不機嫌になっていく。
バカ殿下は、2人から顔を背けて溜息を吐いていた。
ん?1人足りない?と思ったら、料理の所にいました。食べ放題に来た男子高校生かってくらいの山盛り。
まぁ、ひとりだけ別世界だけど、本人幸せそうだから良いでしょう。
バカ殿下と目が合った。
ヤベェ。こっちに歩いて来る。
後2メートルってところで、急に目の前に壁ができた。
「今日も可愛いね、僕達のお姫様」
「このドレスをデザインした人は、私達の天使の良さをよく解っているわ」
鉄壁ディフェンス、我が兄とその嫁。
私からは見えないが、サラからはバカ殿下の様子が見えてたらしい。
扇で隠す意味がないくらい、思いっ切り吹き出していた。
「サラシーア、何です?みっともない」
義姉がポーカーフェイスを保てなかったサラを叱る。
「申し訳ありません、アマンダお姉様。
魔力の切れた傀儡のように、手を伸ばしたまま急に固まった人がいたもので」
確かにそりゃ可笑しいわ。
「そう、それはしょうがないわね。次からは気を付けなさい」
あ、義姉もしょうがないと認めましたよ。
「僕と踊ってくださいますか?お姫様」
差し出された兄の手を取り、フロアへと歩いて行く。
途中で傀儡とすれ違います。
うふふ。さすがに身内と踊るのを邪魔は出来ないですよね。
小さい頃から踊っているので、やはり兄と踊るのは安心する。
私が小さい頃は、ダンスと言いながら、兄が私を抱き上げてクルクルと回ったりしていただけだが。
そんなちょっと気を抜いていた時に、それは起こった。
「ふざけるな!」
この声は、バカ殿下!?
演奏していた楽団も手を止めてしまっている。
勿論、私達も含めフロアで踊ってた全員が動きを止めた。
何?何事!?
確かにバカ殿下は馬鹿だけど、こんな公式の場で騒動を起こすほどではなかったと思うけど……
兄と視線を合わせて頷き合い、声のした方へと移動する。
見えたのは、リュオとバカ殿下が睨み合っている場面。
その間にはヒロイン。
まるで「私の為に争わないで」みたいな顔してる。
何をどうしたらこんな状況に?
「本当の事を言っただけだろう」
リュオの低い声が会場内に響いた。
決して大きな声ではない。
それだけ会場が静かなのだ。
「好きな女の行動に責任を持て、とは侮辱ではなくなんだと言うんだ!」
バカ殿下の一際大きな声が会場に響く。
え?当たり前の事を言われて、何で怒ってんの?
「自国の着物を馬鹿にされて、はいそうですか、で済ませるほど寛大ではないのでな」
リュオの声がいつもより低いのは、静かな怒りのせいなのね。
そして、それはとても正当性のある怒りだ。
「馬鹿になんてしてません!私のドレスの方が高級でオシャレだって言っただけです!」
は?ちょっと頭に蟲でも湧いてんの?
それのどこが馬鹿にしてないの?
「チョコア様。ドレスというものは、着ている人にどれだけ似合っているかだけではなく、その場にどれだけふさわしいデザインか、用途に合っているか、そのように色々な事を考えて作られております。
だから、他人と比べる物ではないのです」
まぁ、本音は比べてるけど、それを表立って言うのはマナー違反だ。
それに正直、先程の件を踏まえても、私達のドレスの方が色々格上ですが。まず貴女はドレスに着られてますからね。
「フィオ!お前まで俺を馬鹿にするのか!婚約者ではなく、こいつの言う事を認めるのか!?」
はぁ?バカ殿下は本当に馬鹿ですね。
馬鹿にするというか、呆れてます。
「自国の物を貶されれば、怒るのは当然かと」
私でも怒るわ。着物もゴスロリも、日本の誇る文化だ。
前世として捉えている私でもムカつくのだから、現在の自国の文化を馬鹿にされれば怒り心頭だろう。
「そこではない!す──」
「いい加減にしないか、マカルディー。その者を連れて、今日は帰りたまえ」
安定のライジ殿下。バカ殿下の台詞を必ずぶった切りますね。
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