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乙女ゲーム本編突入です。

第50話:コート

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 ほんのりと青味がかった白のコート。
 チョコアには、サイズの合ってないコート。
 ん~。言われれば私の髪色に近い色かなぁ。
 でも私、今年は義姉からプレゼントされた濃紺のコートを着ております。
 え?なぜ濃紺か?
 それは、義姉の髪色がだからですよ。
 昨年は、兄の瞳の色のハスカップゼリーみたいな派手な赤紫でした。
 似合ってたから、別に良いけどね。

 余談ですが、サラのコートは私と色違いで、同じデザインです。
 スタイルが全然違うので、誰も気付いてくれないけどね!
 色は去年の私よりも派手な赤。
 ラズベリーレッド。
 無茶苦茶似合ってるけどね。


「マカ様ぁ、素敵なコートありがとうございますぅ」
 鼻にかかった耳障りな声が食堂に響く。
 必要以上に声が大きいのは、第一王子からコートをプレゼントされたと皆に自慢してるのだろう。
 似合ってないけどね!
 そこかしこから、くすくすと笑い声が起こっているけど、チョコアには聞こえていないらしい。

 嬉しそうなチョコアと対象的に、バカ殿下は浮かない顔をしている。
 サイズの合わないコートをプレゼントしたなんて、恋人として恥ずかしいですよね。
 サラは私へのプレゼントだったのでは?と言ってましたが、やはり考えられません。
 今まで、それこそクッキー1枚だってくれた事ないんだよ?
 ないわ~

「浅黒い肌に白いコートか」
 何の感情も含まない声が食堂に響きます。
 あざけりも、侮蔑ぶべつも含まない、ただ事実だけを告げる声。
 それなのに、空気が冷えた気がするのはなぜだろう。
「私には無い選択肢だな」
 今度は、明らかに馬鹿にしたような響きを含んでいる。
 見なくても判る。
 しかし、何でここに居るのか不思議だ。
 腹黒……もとい、ライジ殿下。

「お、お前か!余計な事をしたのは!」
 バカ殿下がライジ殿下を睨んでいます。
 こんな所で兄弟喧嘩かよ。
「余計?王宮に『恋人への贈り物だと言うから急いで作った』と届けられたから、お前の侍従にそのように伝えて渡しただけだが?」
 あら、ライジ殿下は悪く無いじゃない。
 むしろ親切?
 そんな事を考えながら2人を見ていたら、バカ殿下と目が合った。
 ヤベェ、嫌な予感しかしない。

「フィオ!お前からも何かないのか!」
 はぁ!?
 形だけのとは言え、婚約者が別の女にプレゼントを贈ってるのに何を言えと?
「そうですわね。とりあえず、愛称呼びはいい加減やめてくださいませ。前もお伝えしましたが、許可しておりません。
 それとも、公爵家から正式に抗議しなければいけませんか?」
 普通ならしないだろうが、うちなら間違いなくするよ!エルクエール家全員がバカ殿下の事認めてないからね!

「ち、違う!コートの事だ!」
 はぁ……どうでも良いわ、そんなコート。
「浅慮でしたわね、マカルディー殿下」
 まず頑丈女チョコアのサイズをちゃんと把握してようよ。
 女の子に夢見過ぎなんだよ。
 多分、このくらい華奢なはず~とかで注文したんだろ?馬鹿だから。

「せんりょだと?」
 あ、意味解ってないな、発音ひらがなだし。
「女性の服のサイズを間違うなど、贈り物の意味がありませんわ。あのような肩も合わない服など、王室御用達仕立て屋の名が泣きます」
「そ、それは……」
「ドレスじゃないから身体にフィットしないし、と適当に注文したのでしょうけど、チョコア様の体型が華奢に見えますか?
 華奢なのは胸くらいで、腕など私の倍はありますわよ」
 あ、しまった。つい本音が。
 バカ殿下と一緒にチョコアをディスっちゃったよ。
 余談だが、あのコートが高級品だと見抜いたサラは、さすがですな。私なんて、かと思ったわ。

「自分が貰えなかったからって、馬鹿にしないで!」
 チョコアが小さいファイティングポーズで文句を言います。
 可愛いと思ってやってるんだろうけど、貴女の体型でそのパツパツコート着てやると、ファイティングポーズよ?
 なんて思って見てたら、ビリリと大きな音が……コートの腕の付け根の背中側が見事に破けました。
 あんな所が切れるって初めて見たわ。


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