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乙女ゲーム本編突入です。

第43話:デビュタント(入場)

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 ミリフィールが呼ばれるという事は、侯爵家の入場も終わりという事だ。
 公爵家は8家と少ないので、いくら最後とその前に呼ばれるとはいえ急がなくては。

 控え室に戻ると、既に兄夫婦は準備万端。
 そして、その横に見知らぬ男性。
 ちょっと肌が浅黒い異国情緒のある美丈夫である。
 私に微笑みかけ……たのではなく、横にいるサラにだった。
「紹介するわね、私達の従兄弟いとこ
 くだんの男性が優美に挨拶をする。
「初めまして。シュヴァルツェ・ド・リンツァルテンと申します。
 以後、お見知りおきを」


 **ピンポーン**
<設定ページ一部閲覧可能になりました>

 久しぶりにきた!
 え?攻略対象者って事?
 残るは隠しキャラの竜人だけだよね?
 え?従兄弟?
 サラって、竜の血が入ってるの?
 てか、名前が難しすぎて覚えられません。マジで。

 私の驚き方に何かを感じ取ったサラが、詳しくは後でね……と耳元で囁いてきた。
 これの事だったのかな?
 ミリフィールが言ってた『鳴った?』とは。

 何て色々考えていると、サラが呼ばれた。
「サラシーア・カヌーレイ様」
 一度、扉が閉じられる。
 公爵家からは、いちいち扉を閉めるのだ。
 面倒だし、時間掛かるから整列して入場で良いじゃん~と思うのは、前世の記憶があるからか?


 次は、私の番ですよ。
 扉が開かれ、名前が呼ばれる。
「フォンティーヌ・エルクエール様」
 兄に手を差し出される。
 その左手に右手をのせ、導かれて入場。
 扉を入り、渾身のカーテシー。
 兄とと腕を組み、歩き出す。
 おかしくね?とは思うが、逆らえない。
 せめて兄が両手に花じゃないのかな~?
 兄夫婦のシスコンぶりは社交界でも有名なので、温かく見守られた気がする。生温かく?いや、そんな、ねぇ……?
 視界の隅で笑いを堪えるサラが見えるが、気にしたら負けだ。

 何となくサワサワしている会場を横切り、サラとミリフィールとジェラールのいる所へと歩く。
 間違っても早足とかしてはいけない。
 優雅に歩く。
「皆様、ご機嫌よう」
「フォンティーヌ様、ご機嫌よう」
「先日は遠方の我が領地までご足労頂き、ありがとうございました」
「改めてご紹介致しますわ。私達の従兄弟です。彼のお母様が私達の父の姉にあたりますの」
 周りに他の貴族がいるので、いつものフランクな話し方は厳禁。

 そして、サラは竜の血が入ってない事が判明。サラの従兄いとこって事は、義姉の従弟いとこでもあるのよね?あれ?全然話してなくね?
 義姉をそっと伺うと、とてもいじめっ子の顔でを見ていた。うん。察した。

 ミリフィールの横にはルーベンが、ジェラールの横にはビゼタールがいるので、ミリフィールにそっと耳うちする。
「例の隠れてた方よ」
 隠しキャラの竜人。
 それを聞いて、ミリフィールの目が見開かれた。
 口をパクパクするのは、色々言いたいがここでは無理だからだろう。
 しかし、これだけ驚くという事は、彼女の言う『鳴った?』は別の情報と言う事になる。


「イライジャ・フォン・ティシエール殿下」

 うおぉ、なんだあのテンプレ王子様は!
 むっちゃ格好良いんですけど!!
 白地に金の刺繍に、金の飾り。
 軍服をオシャレにした様なデザインって言えば伝わり易いかしら?
 隣にフワッフワなイメージの女の子がいて、それがまた超可愛いの。
 こ、婚約者かしら?

「彼女は再従姉妹はとこですわよ。ああ見えて、既婚者らしいですよ」
 サラちゃんや。貴女は超能力者かな?
 それとも顔に出てる?
 そっと自分の顔に触れると、フッと笑われる。
「貴女の思考回路なんてお見通しですわ。大丈夫、顔には出ていらっしゃらないから」
 そんな私達の横をライジ殿下が通り過ぎる。
 歩く姿も格好良いよ。フワフワ乙女と並んで歩くと、絵画のようだよ。芸術品だよ。


「マカルディー・フォン・ティシエール殿下。
 ……チョコア…様?」

 **ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<設定ページ一部閲覧可能になりました>

 これか!!
 ってか、バカ殿下。婚約者放置して、平民チョコアをエスコートかよ。


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