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乙女ゲーム本編突入です。
第40話:真夏の雪
しおりを挟む眼福、眼福。
今年の夏休みは、フルーツが豊作だわ。
プライベートビーチでメロンに桃に……
「何か変な事考えてるでしょ」
後頭部を叩かれた。
横に座っているミリフィールだ。
ここは、ジェラールの領地にあるプライベートビーチ。
諸外国に攻められたら、ここから上陸させないようにする為に、ジェラールの領地は軍事力が高い。
準辺境伯と呼ばれる由縁だ。
「しかし、サラもお義姉さんも見事なメロンぶりね」
水辺ではしゃぐ姉妹を見て、ミリフィールが呟く。
「同い年とは思えないわね」
チラリと視線が私に……失礼だな。
ここでは『水着』というものがなく、ギリシャ神話の衣装のようなものを着る。
かえってエロチックだと思う。
濡れても透けはしないんだけどさ。
私が思春期の男子高校生だったら、ここから立ち上がれないだろう。
また後頭部を叩かれた。
今度は反対側から。
「痛~い」
「不穏な空気を感じた」
ジェラールがしれっとそんなことを言う。ちなみにジェラールは、美乳美尻の桃タイプだ。
あの義姉でさえメロンなら、スイカはリアルではどんなだったんだろう?と、ちょっと失礼な目線をジェラールの美乳に向けた。
あ、また叩かれた。なんでバレた。
「うちの子を、あまりポカポカ叩かないでくれよ」
後ろから両脇に手を入れられて、グワッと持ち上げられ、そのまま横抱きにされた。姫抱っこじゃなくて良かった。
変わらないって?私の気持ちの問題だ!
座ってた大人を足場の悪い砂地で持ち上げるって、どんな筋力だよ!と、思うが決してゴリラではない兄。
むしろ細身にさえ見える。
一応言っておくが、多少華奢ではあるが私も16歳の体型はしているぞ。
「あら、抜け駆け。ずるいわ」
いつの間に来たのか、義姉が兄ごと私を抱きしめる。
背中に感じる幸せな柔らかさ。
じゃ、ないわ!!
「お兄様もお義姉様も。私ももう大人ですから、こういう子供扱いはおやめください」
兄の腕から飛び降り……られませんでした。
兄に抱えられたまま屋敷に戻ると、ビゼタールとルーベンがいた。
婚約者と一緒に夏休みを過ごす為に来たんですって!まぁ、幸せそうだ事。
「やぁ、久しぶりだな。ビゼタール」
「本当にな、アイザック」
何か、お互いに名前を呼ぶ時に含みがあるのが副音声で聞こえますよ?
ルーベンは、ジェラールに挨拶をした後ミリフィールの所へと寄って行く。
この前、ミリフィールは「私は完全にゲームを脱したわ」と、喜んでいた。
完全に豆コンビの婚約者ではなくなったミリフィールとジェラールは、今後ゲームに関わる事はないだろう。
ちくしょう。
「本当は、ライジ殿下とリュオも来たがっていたのですが、何か国の催し物に参加するとか何とか言ってました」
ん?ルーベン様?
今、不穏な台詞が聞こえましたよ。
「国の催し物、ですか?」
「はい」
返事をしたルーベン様も、その意味に気付いたようで、バツの悪そうな表情になる。
「婚約者を伴わない公式行事って何でしょうね?お兄様」
真夏の海なのに、キラキラ雪が降ってます。
「もしかしたら、イライジャ殿下だけ出席で、バカ殿下は出ないのかもしれないですわね」
義姉がウフフと黒い笑顔です。
「あら、結局フィオは呼ばれなかったのね」
サラが爆弾投下デスヨ。
「え?何か知ってるの?」
皆の視線がサラに集中してますよ。
「他国の王室を招いての食事会らしいわよ。
相手の皇子達もライジ殿下も婚約者がいないから、バカ殿下の婚約者だけ呼ぶのはどうかという話になったみたいよ。
バカ殿下は最後までフィオを連れて行くって言ってたみたいだけどね。
ライジ殿下情報」
ふ~ん。
「……まぁ、それだけじゃないんだけどね」
サラがボソリと呟く。
多分、聞こえたのは私だけ。
私と目が合うと、ニヤリと笑うサラ。
まったく、そんだけ色々ライジ殿下から聞く仲なのに、なぜ婚約者じゃないんだろう。
「それにしても何の連絡もないのは、失礼極まりないな」
確かに正論だが兄よ。雪はもういいよ。
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