40 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第40話:真夏の雪
しおりを挟む眼福、眼福。
今年の夏休みは、フルーツが豊作だわ。
プライベートビーチでメロンに桃に……
「何か変な事考えてるでしょ」
後頭部を叩かれた。
横に座っているミリフィールだ。
ここは、ジェラールの領地にあるプライベートビーチ。
諸外国に攻められたら、ここから上陸させないようにする為に、ジェラールの領地は軍事力が高い。
準辺境伯と呼ばれる由縁だ。
「しかし、サラもお義姉さんも見事なメロンぶりね」
水辺ではしゃぐ姉妹を見て、ミリフィールが呟く。
「同い年とは思えないわね」
チラリと視線が私に……失礼だな。
ここでは『水着』というものがなく、ギリシャ神話の衣装のようなものを着る。
かえってエロチックだと思う。
濡れても透けはしないんだけどさ。
私が思春期の男子高校生だったら、ここから立ち上がれないだろう。
また後頭部を叩かれた。
今度は反対側から。
「痛~い」
「不穏な空気を感じた」
ジェラールがしれっとそんなことを言う。ちなみにジェラールは、美乳美尻の桃タイプだ。
あの義姉でさえメロンなら、スイカはリアルではどんなだったんだろう?と、ちょっと失礼な目線をジェラールの美乳に向けた。
あ、また叩かれた。なんでバレた。
「うちの子を、あまりポカポカ叩かないでくれよ」
後ろから両脇に手を入れられて、グワッと持ち上げられ、そのまま横抱きにされた。姫抱っこじゃなくて良かった。
変わらないって?私の気持ちの問題だ!
座ってた大人を足場の悪い砂地で持ち上げるって、どんな筋力だよ!と、思うが決してゴリラではない兄。
むしろ細身にさえ見える。
一応言っておくが、多少華奢ではあるが私も16歳の体型はしているぞ。
「あら、抜け駆け。ずるいわ」
いつの間に来たのか、義姉が兄ごと私を抱きしめる。
背中に感じる幸せな柔らかさ。
じゃ、ないわ!!
「お兄様もお義姉様も。私ももう大人ですから、こういう子供扱いはおやめください」
兄の腕から飛び降り……られませんでした。
兄に抱えられたまま屋敷に戻ると、ビゼタールとルーベンがいた。
婚約者と一緒に夏休みを過ごす為に来たんですって!まぁ、幸せそうだ事。
「やぁ、久しぶりだな。ビゼタール」
「本当にな、アイザック」
何か、お互いに名前を呼ぶ時に含みがあるのが副音声で聞こえますよ?
ルーベンは、ジェラールに挨拶をした後ミリフィールの所へと寄って行く。
この前、ミリフィールは「私は完全にゲームを脱したわ」と、喜んでいた。
完全に豆コンビの婚約者ではなくなったミリフィールとジェラールは、今後ゲームに関わる事はないだろう。
ちくしょう。
「本当は、ライジ殿下とリュオも来たがっていたのですが、何か国の催し物に参加するとか何とか言ってました」
ん?ルーベン様?
今、不穏な台詞が聞こえましたよ。
「国の催し物、ですか?」
「はい」
返事をしたルーベン様も、その意味に気付いたようで、バツの悪そうな表情になる。
「婚約者を伴わない公式行事って何でしょうね?お兄様」
真夏の海なのに、キラキラ雪が降ってます。
「もしかしたら、イライジャ殿下だけ出席で、バカ殿下は出ないのかもしれないですわね」
義姉がウフフと黒い笑顔です。
「あら、結局フィオは呼ばれなかったのね」
サラが爆弾投下デスヨ。
「え?何か知ってるの?」
皆の視線がサラに集中してますよ。
「他国の王室を招いての食事会らしいわよ。
相手の皇子達もライジ殿下も婚約者がいないから、バカ殿下の婚約者だけ呼ぶのはどうかという話になったみたいよ。
バカ殿下は最後までフィオを連れて行くって言ってたみたいだけどね。
ライジ殿下情報」
ふ~ん。
「……まぁ、それだけじゃないんだけどね」
サラがボソリと呟く。
多分、聞こえたのは私だけ。
私と目が合うと、ニヤリと笑うサラ。
まったく、そんだけ色々ライジ殿下から聞く仲なのに、なぜ婚約者じゃないんだろう。
「それにしても何の連絡もないのは、失礼極まりないな」
確かに正論だが兄よ。雪はもういいよ。
57
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる