38 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第38話:メロンに助けられた
しおりを挟むワイワイガヤガヤ。
ワタシタチハ、ミンナデタノシンデイルノデ、ナニモキコエマセン。
「聞いているのか、フィオ!」
チッ。名指しされちまったぜ。
「あら、マカルディー殿下、いらしたのですね。何かご用でしょうか?」
デザートのタルトを持ったまま、バカ殿下に返事をする。
「用があるから声を掛けているんだ」
「ワタクシも、マカルディー殿下には言わなきゃと思っておりましたの。
ワタクシ達、愛称で呼び合うほど親しくないと思いますわ」
あくまでも、笑顔。手にはタルト。
「え、な、は?」
バカ殿下、何言ってるかわかりませんよ。
「私がマカルディー殿下に言われて愛称で呼んでいた事で誤解をされてしまったようなので、これからは普通に呼ばせていただきますので、マカルディー殿下もそのようにお願いします」
満面の笑顔。文句は言わせない。
「フィオ?ロールケーキを切るから戻って来なさい」
ライジ殿下、わざとですよね?
このタイミングでの声掛け、絶対わざとですよね?
「何でイライジャが愛称で俺が名前呼びなんだ」
不満そうなバカ殿下。ライジ殿下への対抗心ですか。
「婚約者以外に愛称呼びさせるなん「マカ様~、スープ盛れましたよ~!」
ナイス、チョコア!
さすが空気読めない女!!
「マカルディー殿下、あちらで愛称で呼ばれておりますわよ?では、失礼いたしますわね」
バカ殿下より、旬のフルーツのロールケーキですよ!
中庭では、絨毯でピクニックしているライジ殿下と私達がおり、王宮調理台を挟んで、テーブルをセットしたバカ殿下ととりまきズ、そしてチョコアがいる。
私達が和気藹々と楽しんでいるのに対し、バカ殿下達はチョコアが1人で騒いでいる印象。
声が聞こえているだけなので、もしかしたら三馬鹿トリオはニコニコと話を聞いているのかもしれないが。
緑茶をすすり、はぁと息を吐く。
「羊羹食べたい」
思わず口から出た。前世の私の大好物。栗入りなら尚可。
洋菓子は充実してるのに、和菓子がほとんど……いや、全然ないのよ、この世界。
私の呟きが聞こえたのか、ミリフィールも「豆大福食べたい」なんて呟いている。
そんな呟きに、眉を顰めた人物がいたなんて、私達は気付いていなかった。
片付けは全て使用人達に任せて、私達は教室へと戻る。
学園が全寮制のままだったら、こんな楽しいお昼は無理だったね。
そう!兄世代では全寮制だったのに、私達の代からは希望者のみ寮に入るんですよ。
王子2人に、公爵家令嬢2人、侯爵家令嬢1人……これだけでも、今年は全寮制にしたら、セキュリティが大変だからでしょうね。
実際は、もっと山ほどいるしな。
それにしても、あと一月ほどで1年生が終わるなんて早いわ~。
その前に長い夏休みがありますが。
今年の夏は、体が弱いフリをしなくて良いから嬉しい。
皆と海とか川とか行きたいな~。
でも貴族の令嬢は日光の下では遊んでくれないか。
サラの水着姿とか、凄そうなのに……ん?この世界で水着って見た事ないかも。
サラの見事なメロンを見ながら歩く。
「前見て歩かないと転ぶわよ」
ご本人様に叱られてしまい、前を向こうとした瞬間、後ろから体当たりをかまされた。
弾け飛んだ私は、サラに抱き付く形になる。目の前には『たゆん』なメロン。
前にもあったな、サラのメロンに助けられた事。
サラの乳に気を取られていなかったら、前に弾き飛んでいたよ。身体が斜めを向いていて良かった!
「大丈夫!?」
ジェラールがサラごと私を抱きとめてくれていた。
お姉様!!素敵!格好良い!惚れる!!
「何していらっしゃるの?チョコア様」
ミリフィールの低い声が聞こえる。
サラに抱きついたまま振り返ると、私の足元にチョコアが座っていた。
「痛~い。酷いですぅ、何で突き飛ばすんですか!」
え?今の状況でよくそんな台詞が出てきたな、お前。
体格差もそうだが、私は今、サラに抱きついているんだぞ!?
57
お気に入りに追加
1,933
あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね
との
恋愛
レトビア公爵家に養子に出されることになった貧乏伯爵家のセアラ。
「セアラを人身御供にするって事? おじ様、とうとう頭がおかしくなったの?」
「超現実主義者のお父様には関係ないのよ」
悲壮感いっぱいで辿り着いた公爵家の酷さに手も足も出なくて悩んでいたセアラに声をかけてきた人はもっと壮大な悩みを抱えていました。
(それって、一個人の問題どころか⋯⋯)
「これからは淑女らしく」ってお兄様と約束してたセアラは無事役割を全うできるの!?
「お兄様、わたくし計画変更しますわ。兎に角長生きできるよう経験を活かして闘いあるのみです!」
呪いなんて言いつつ全然怖くない貧乏セアラの健闘?成り上がり?
頑張ります。
「問題は⋯⋯お兄様は意外なところでポンコツになるからそこが一番の心配ですの」
ーーーーーー
タイトルちょっぴり変更しました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
さらに⋯⋯長編に変更しました。ストックが溜まりすぎたので、少しスピードアップして公開する予定です。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
体調不良で公開ストップしておりましたが、完結まで予約致しました。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
ご一読いただければ嬉しいです。
R15は念の為・・
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる