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乙女ゲーム本編突入です。
第38話:メロンに助けられた
しおりを挟むワイワイガヤガヤ。
ワタシタチハ、ミンナデタノシンデイルノデ、ナニモキコエマセン。
「聞いているのか、フィオ!」
チッ。名指しされちまったぜ。
「あら、マカルディー殿下、いらしたのですね。何かご用でしょうか?」
デザートのタルトを持ったまま、バカ殿下に返事をする。
「用があるから声を掛けているんだ」
「ワタクシも、マカルディー殿下には言わなきゃと思っておりましたの。
ワタクシ達、愛称で呼び合うほど親しくないと思いますわ」
あくまでも、笑顔。手にはタルト。
「え、な、は?」
バカ殿下、何言ってるかわかりませんよ。
「私がマカルディー殿下に言われて愛称で呼んでいた事で誤解をされてしまったようなので、これからは普通に呼ばせていただきますので、マカルディー殿下もそのようにお願いします」
満面の笑顔。文句は言わせない。
「フィオ?ロールケーキを切るから戻って来なさい」
ライジ殿下、わざとですよね?
このタイミングでの声掛け、絶対わざとですよね?
「何でイライジャが愛称で俺が名前呼びなんだ」
不満そうなバカ殿下。ライジ殿下への対抗心ですか。
「婚約者以外に愛称呼びさせるなん「マカ様~、スープ盛れましたよ~!」
ナイス、チョコア!
さすが空気読めない女!!
「マカルディー殿下、あちらで愛称で呼ばれておりますわよ?では、失礼いたしますわね」
バカ殿下より、旬のフルーツのロールケーキですよ!
中庭では、絨毯でピクニックしているライジ殿下と私達がおり、王宮調理台を挟んで、テーブルをセットしたバカ殿下ととりまきズ、そしてチョコアがいる。
私達が和気藹々と楽しんでいるのに対し、バカ殿下達はチョコアが1人で騒いでいる印象。
声が聞こえているだけなので、もしかしたら三馬鹿トリオはニコニコと話を聞いているのかもしれないが。
緑茶をすすり、はぁと息を吐く。
「羊羹食べたい」
思わず口から出た。前世の私の大好物。栗入りなら尚可。
洋菓子は充実してるのに、和菓子がほとんど……いや、全然ないのよ、この世界。
私の呟きが聞こえたのか、ミリフィールも「豆大福食べたい」なんて呟いている。
そんな呟きに、眉を顰めた人物がいたなんて、私達は気付いていなかった。
片付けは全て使用人達に任せて、私達は教室へと戻る。
学園が全寮制のままだったら、こんな楽しいお昼は無理だったね。
そう!兄世代では全寮制だったのに、私達の代からは希望者のみ寮に入るんですよ。
王子2人に、公爵家令嬢2人、侯爵家令嬢1人……これだけでも、今年は全寮制にしたら、セキュリティが大変だからでしょうね。
実際は、もっと山ほどいるしな。
それにしても、あと一月ほどで1年生が終わるなんて早いわ~。
その前に長い夏休みがありますが。
今年の夏は、体が弱いフリをしなくて良いから嬉しい。
皆と海とか川とか行きたいな~。
でも貴族の令嬢は日光の下では遊んでくれないか。
サラの水着姿とか、凄そうなのに……ん?この世界で水着って見た事ないかも。
サラの見事なメロンを見ながら歩く。
「前見て歩かないと転ぶわよ」
ご本人様に叱られてしまい、前を向こうとした瞬間、後ろから体当たりをかまされた。
弾け飛んだ私は、サラに抱き付く形になる。目の前には『たゆん』なメロン。
前にもあったな、サラのメロンに助けられた事。
サラの乳に気を取られていなかったら、前に弾き飛んでいたよ。身体が斜めを向いていて良かった!
「大丈夫!?」
ジェラールがサラごと私を抱きとめてくれていた。
お姉様!!素敵!格好良い!惚れる!!
「何していらっしゃるの?チョコア様」
ミリフィールの低い声が聞こえる。
サラに抱きついたまま振り返ると、私の足元にチョコアが座っていた。
「痛~い。酷いですぅ、何で突き飛ばすんですか!」
え?今の状況でよくそんな台詞が出てきたな、お前。
体格差もそうだが、私は今、サラに抱きついているんだぞ!?
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