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乙女ゲーム本編突入です。
第20話:新情報って、えぇぇええ!?
しおりを挟む今日もいつも通りの日常です。
いつも通りだから日常って言うんだよ、と、自己ツッコミを入れておく。
そして、その日常のやり取りを白けた視線で眺めていた。
「だから、その様な説明をされても、解らんものは解らん」
皆それぞれ、自分の手元にある教科書を読む。やる事がないので、苦肉の策だ。
だってこれ、本来は教科書をさらっと読んで先に進む様な内容なんだから。
発言者が第一王子じゃなければ、盛大なため息と馬鹿にした視線が教室内に蔓延しただろう。ため息はともかく、視線は蔓延しているか。
「あの、私もイマイチ掴み切れないんですけど……」
チョコアがおずおずと手を挙げる。
平民だからしょうがないか……とは、言わない。
だってここは特別クラスだから。
本来、それなりに出来なければいけない。
授業が始まってから既に一週間、毎回これでは先が思いやられる。
まだ基礎編さえ終わっていない。他のクラスと同じか、下手をすれば優良クラスに負けているかもしれない。
いや、負けてるだろうな~。
「先生」
手を挙げると、助かった!とでも言う表情で私を見る。
残念。助け舟は出しません。
「ワタクシ、ここにいても意味がない様なのでサロンへ行っておりますわ。
授業が基礎編以上に進むようなら、呼んでくださいませ」
自席に丸くて平たい魔石を置く。これは、魔力を流すと対になっている魔石が光る簡易通信具だ。
私が席を立つと、サラも続いて席を立つ。あと数人、同じように席を立つのが見えた。
サロンに行けるのは侯爵以上なので、高位貴族なのは間違いない。
伯爵以下の皆もサロンは無理でも、食堂とかで時間を潰せるので、まぁ良しとしよう。
いや、さすがに席を立ちにくいか。
しょうがない。
「先生?食堂の使用許可をください。
他の皆様もこれ以上無意味な時間を過ごすのは可哀想ですもの」
本来、使用許可なんて要らないけど、こう言えば皆も席を立ち易いだろう。
と、ここで例の音が……?
**ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<新しいページが一部閲覧可能になりました>
えぇ~、これ、イベント扱いなの?
確かゲームで教室出て行くイベントは、1人で聖魔法を使うヒロインに嫉妬したシフォンティーヌが『ワタクシ達、無意味な時間を過ごしたくありませんの。聖魔法なんて使えませんし』って、取り巻き引き連れて教室を出て行くんだよね。
で、他のクラスメイトに不評を買う的な?
こんな基礎編でのイベントじゃないはず。もっとも、ゲームではそんなに詳しく授業風景ないけどさ。
ちなみに、強制イベントなので、今までみたいな選択肢は出ない。
サロンで定位置になりつつあるソファに座り、給仕の人にジンジャーティーを頼む。同じテーブルのサラはアップルティー。
膝の上に『甘王公式本』を置き、憂いを含んで俯いている振りをして本を見る。
テーブルの上に置きたいけど、見えない給仕は確実に本の上に紅茶を置くだろう。
支障はなくても、気持ち的に嫌だ。何せ『宝物』だから。
やはり解放されたイベントは、予想通りのものだった。
だいぶ意味合いが違う『無意味な時間』発言なのにな。
扉が開く音がした。そして入って来たグループの中の一人が、私達の席の横で足を止める。
顔を上げて確認すると、侯爵家の令嬢だ。
彼女は他の令嬢よりも髪の巻き方や化粧が何となくナチュラルで、おしゃれな女子って感じだ。
**ピンポーン**
<設定ページ一部閲覧可能になりました>
え?このオサレ女子も役あり?
なんて思っていたら、更に驚きの事実が発覚。
彼女の視線は、私の膝の上。
そう。他人には見えないはずの『甘王公式本』の辺り。
しかも呟いたのだ。
「甘王?」と。
えぇぇえ!?転生者、発見!!
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