【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】

仲村 嘉高

文字の大きさ
上 下
20 / 113
乙女ゲーム本編突入です。

第20話:新情報って、えぇぇええ!?

しおりを挟む
 


 今日もいつも通りの日常です。
 いつも通りだから日常って言うんだよ、と、自己ツッコミを入れておく。
 そして、その日常のやり取りを白けた視線で眺めていた。

「だから、その様な説明をされても、解らんものは解らん」
 皆それぞれ、自分の手元にある教科書を読む。やる事がないので、苦肉の策だ。
 だってこれ、本来は教科書をさらっと読んで先に進む様な内容なんだから。
 発言者が第一王子じゃなければ、盛大なため息と馬鹿にした視線が教室内に蔓延しただろう。ため息はともかく、視線は蔓延しているか。

「あの、私もイマイチ掴み切れないんですけど……」
 チョコアがおずおずと手を挙げる。
 平民だからしょうがないか……とは、言わない。
 だってここは特別クラスだから。
 本来、それなりに出来なければいけない。
 授業が始まってから既に一週間、毎回これでは先が思いやられる。
 まだ基礎編さえ終わっていない。他のクラスと同じか、下手をすれば優良クラスに負けているかもしれない。
 いや、負けてるだろうな~。

「先生」
 手を挙げると、助かった!とでも言う表情で私を見る。
 残念。助け舟は出しません。
「ワタクシ、ここにいても意味がない様なのでサロンへ行っておりますわ。
 授業が基礎編以上に進むようなら、呼んでくださいませ」
 自席に丸くて平たい魔石を置く。これは、魔力を流すと対になっている魔石が光る簡易通信具だ。

 私が席を立つと、サラも続いて席を立つ。あと数人、同じように席を立つのが見えた。
 サロンに行けるのは侯爵以上なので、高位貴族なのは間違いない。
 伯爵以下の皆もサロンは無理でも、食堂とかで時間を潰せるので、まぁ良しとしよう。
 いや、さすがに席を立ちにくいか。
 しょうがない。
「先生?食堂の使用許可をください。
 他の皆様もこれ以上無意味な時間を過ごすのは可哀想ですもの」
 本来、使用許可なんて要らないけど、こう言えば皆も席を立ち易いだろう。

 と、ここで例の音が……?

 **ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<新しいページが一部閲覧可能になりました>

 えぇ~、これ、イベント扱いなの?
 確かゲームで教室出て行くイベントは、1人で聖魔法を使うヒロインに嫉妬したシフォンティーヌが『ワタクシ達、無意味な時間を過ごしたくありませんの。聖魔法なんて使えませんし』って、取り巻き引き連れて教室を出て行くんだよね。
 で、他のクラスメイトに不評を買う的な?
 こんな基礎編でのイベントじゃないはず。もっとも、ゲームではそんなに詳しく授業風景ないけどさ。

 ちなみに、強制イベントなので、今までみたいな選択肢は出ない。



 サロンで定位置になりつつあるソファに座り、給仕の人にジンジャーティーを頼む。同じテーブルのサラはアップルティー。
 膝の上に『甘王公式本』を置き、憂いを含んで俯いている振りをして本を見る。
 テーブルの上に置きたいけど、見えない給仕は確実に本の上に紅茶を置くだろう。
 支障はなくても、気持ち的に嫌だ。何せ『宝物』だから。

 やはり解放されたイベントは、予想通りのものだった。
 だいぶ意味合いが違う『無意味な時間』発言なのにな。


 扉が開く音がした。そして入って来たグループの中の一人が、私達の席の横で足を止める。
 顔を上げて確認すると、侯爵家の令嬢だ。
 彼女は他の令嬢よりも髪の巻き方や化粧が何となくナチュラルで、おしゃれな女子って感じだ。

 **ピンポーン**
<設定ページ一部閲覧可能になりました>

 え?このオサレ女子も役あり?
 なんて思っていたら、更に驚きの事実が発覚。
 彼女の視線は、私の
 そう。他人には見えないはずの『甘王公式本』の辺り。
 しかも呟いたのだ。

 「甘王あまおう?」と。

 えぇぇえ!?転生者、発見!!


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

処理中です...